part.4          What's this? 写真をクリックしてみてください。



                今回は、一休みする意味で、大方の女性が興味を持つ         
                宝石ダイヤモンドのあれこれを気楽に話すことにした。        
        
 「赤ん坊は、光るもの、動くもの、音がでるものが好き。女性も光るものが好きで、光り
にたいする執着は、その輝きに透明感をともなえば、きわめて高い確率で好感を持つ。」と
いうのは色彩学の一節だが、これはダイヤモンドにも通じるものであろう。     
   
 ダイヤモンドに対する形容詞は、魅惑的・神秘的・宇宙的・セクシャル・エネルギッシュ
・・と枚挙にいとまがない。私は広告の業界にいながらこうした形容詞には乗せられないア
マノジャクと思ってきたが、ダイヤに関するかぎりでは、認めざるを得ないようだ。
    
 科学的には、月まで人間が行く時代になっても、地球の内部はいまだに遠い未知の存在で
ある。そんな足下の150キロメ−トルの地底から、また遥か25億年の昔からやってきた
自然が生み出した鉱物、炭素原子の結晶体がダイヤだという。             
 しかし、あのちっぽけな石に、どうしてこうも魅惑的な引力があるのか不思議に思う。 
   
 ダイヤを撮った写真は数千枚を越すであろう。ダイヤの裏表から内部まで覗き込み、その
正体を知りながら未だに飽きない。殊に裸石を撮るようなってから興味は倍加した。支持具
のない石はあらゆる方向から見られるので、新しいフォルムの発見があり、プリズム効果に
よる不思議な陰影が現れ、さらに魅力を感じるようになった。         
   
  ダイヤの輝きは言葉どおり千変万化、「千変万化」という言葉がダイヤのキラメキ
  のためにあるのかと思われるほど目まぐるしい。ダイヤの撮影はそれを追っかける 
  わけだから、終わりがない。 




ダイアモンドのネックレス 1979
    



4億円のネックレス

      これを見た女性が、「ウワ−凄い! 怪盗ルパンが狙いそうなネックレス−−」と
  いったが、それで目的は果たしている。                     
    
  このネックレスの中央にある両端がとがった長楕円形あるいは魚雷形とも形容できるカッ
トはマ−キ−ズ・カットと呼ばれ、大型のダイヤによく用いられ、これは5カラットをこえ
他のダイヤとあわせて時価4億円という。会社はこれを売る気はなく、注目していただき、
会社名を覚えてもらえればという企業広告である。これは、宝石の販売会社サザンクロスが
ミセスという婦人雑誌に連載したネックレス・シリ−ズ中の1点である。        
     
 この会社の話では、日本ではこれだけ豪華なものは、それをつけて行くようなパ−ティが
ほんとうに少ないので、めつたに売れることはなく、時折、ごく一部の裕福層が資産として
購入し、多くは銀行の貸金庫で眠つているという。                  
             
西欧の合理主義        
 かなり前になるが、ドイツ大使館の紹介でオランダへゆき、英国王室専門の世界的に有名
といわれるダイヤモンド・カッタ−の仕事ぶりを撮影したことがあった。        
 その時この老カッタ−から、欧米では街の中心に立派な合成宝石の専門店があり、高価な
ダイヤモンド、ルビ−、エメラルドなど指輪、ネックレスその他のアクセサリ−をもつてい
る人の注文で、同じデザインでイミテ−ションがつくられ、普段は本物代わりに用い、本物
は特別のパ−ティだけにつけていく、そんな習慣があるときいた。           
    
  本物は金庫にしまい、「同じものを持っている」という気持ちでイミテ−ションをいつも
つけているということらしくこれは洋式の合理主義といったことであろうか。      
    
  (註)このシリ−ズのバックには各種の大理石が使われたが、これは燐光を放つ鉱石を
        を磨き上げた石版である。ダイヤに控え目な燐光がうまくマッチした。
   
      
           このボタンをクリックすると、ダイヤの品質の話があります



                                     1980




ダイヤモンドのル−ツ

 ダイヤモンドは、主として大陸の地殻の地下150キロメ−トル以上の深さで、2000
度とか3000度の高温度、何万気圧という非常に強い圧力によって結晶し、キンバ−ライ
トという鉱石によって地表に運ばれてきた。                     
 現在ヨ−ロッパと南極大陸をのぞく25ケ国で採掘されている。BC4世紀から1000
年間はインドが唯一の産地だったが、1870年代に南アフリカ南部で大規模な鉱床が発見
され劇的に供給が増加した。                       
               

歴史上のダイヤ はイギリスヘ

 歴史上、最も古い記録を持つダイヤはインド産の186カラットで、「この石の所有者は
世界を支配する」といういい伝えがあった。これは1304年インドの王族が手に入れたが
後にペルシャ王が奪いさらに王位争奪の動乱を経て最後は1850年ビクトリア女王に献上
されたという。                                  
 イギリス王室ではその後卵型のブリリアント・カットに磨きなおし、108.9カラット
にへってしまったが、今日もなお「クイ−ン・メリ−の王冠」に輝いているのはよく写真で
みるとおりである。                     
    
 世界最大のダイヤは、1905年に南アフリカで発見されたもので、この原石は3106
カラットつまり620グラムもあり、イギリスに運ばれて1908年切断されて9個の大型
のカットのものと96個の小型のブリリアン・カットにつくられ、いずれも王冠や王杖、そ
の他国王や女王の礼装用のアクセサリ−に用いられた。                
     
 最近のものでは、デ・ビアス社が2000年を記念してロンドンで公表したダイヤ「デ・
ビアス ミレニアムスタ−」は203.04カラット、Dカラ−(完ぺきな無色)、フロ−
レス(完ぺきな無傷)で、世界で一番美しい輝きをもつといわれるダイヤモンドである。 
 2000年9月から上野の国立科学博物館で開催したダイヤモンド展に出品されている。
     
  この展示では写真家として特に感じたことがある。それは透明な大き目の円筒のなか 
 に置かれただだ一個のこのダイヤだけが、かなり高いところから、なるべく人目につか 
 ぬよう、なんと15灯もの小型のスポット・ライトで照明されていたことだ。     
  つまり周囲をほの暗くして15個もの太陽で照らすようなものだから、その輝きはキ 
 ラキラを通り越してギラギラに、ファイヤ−と呼ばれる虹色の光が人の目の動きにつれ
 て放射され、幻惑するというしかけで、女性客のため息もひときわ高くなる。こんな派
 手な照明をするとダイヤも一廻りも二廻りも大きく感じるのは、日頃の撮影で十分承知
 していること、さすが世界のダイヤの元締めデ・ビアスと思わせる演出であった。  
  ダイヤが一番輝いて良く見えるのは、ホテルのロビ−などシャンデリアのあるところ 
 だというのも同一である。
このボタンをクリックすると、撮影時の意外な裏話があります。

 

         



空飛ぶダイヤ? 1980 東京の夜景を背景に浮かぶダイヤ? 私はこんな乗り物でサソリ座あたりへ行きたいと思った




ダイヤモンドの輝き
 
 宝石の資格は美しさ、希少価値、高い硬度をもち摩滅したり傷がつかないこと、とくに高
い屈折率を持ち強い輝きをみせること、化学的に安定していることなどがある。これらのす
べての点で、天然鉱物中ダイヤの右にでるものはなく、宝石の王者といわれるわけである。
    
  ダイヤの硬度は10度で万物中もっとも硬く、他の何者によっても傷つけられることはな
い。また屈折率2.4は天然鉱物中もっとも高い屈折率もつ透明の鉱物である。     
 この特性を利用して、ダイヤが美しく輝くための決定的理論によるブリリアント型といわ
れる58面をもつ形に研磨すれば、上の方から入った光りは底面での全反射によって、すべ
ての光が反射され、まるで石の内部に光源を持つているように強く輝く。さらに適度の光の
分散性があるために、その輝きにはファイヤ−といわれる虹色のきらめきが加わって、いっ
そう美しさを増すことになる。                           
     
 ダイヤの虹色は、パビリオンといわれる底から反射した光が、上部のクラウンの傾斜した
ところから飛び出す時に、プリズム効果によって7色に分光し、完全なカットでは虹色の洪
水となって目に映る。
 
このボタンをクリックすると、ダイヤ撮影時の裏話があります。

 

   



 

究極のダイヤを目指して
 エイトスタ−・ダイヤモンド
    
 世界一美しい完全なダイヤモンドを目指し
た日本人がいる。
 田村駿禮(たむらたかのり)さんという。
田村氏は、ブリリアント・カットの完全なカ
ット、アメリカのトルコフスキ−という人の
理論にしたがって磨かれたアイデアル・カッ
トに挑戦し、さらに世界一美しい究極のダイ
ヤとして1985年、「エイトスタ−・ダイ
ヤモンド」を完成させた。
     
「今考えると、きっとダイヤモンドもそう磨
かれることを願っていたとしか思えない。」
という田村氏の言葉が印象に残る。
 もう10数年前になると思うが、ある日、
田村氏は私のところへダイヤモンドの広告に
使用する写真を見るために訪ねてこられたが         
この時ファイヤ−・スコ−プという長方形の 
箱を持った方も一緒にやってこられた。             フォト・デッサン 瑛 九 作品 
     
 ダイヤモンドのカットの良否がたちどころに見分けられる箱だという。私も長年ダイヤ
を撮ってきたので、ル−ペで見てわかるのはキズの有無だけで、どんなカットのものが良
いものか見当もつかず、この業界の鑑定には相当の不審感をもつていたので、突如現れた
この箱には非常に興味をもち、何回も覗いて見て驚いた。それはまったくの素人にも一目
瞭然でカットの様子がわかる画期的なものであった。                
     
 私はこの装置の完成で愛用者には鬼に金棒と思った。ところが、物事はそうは簡単にゆ
かず、それからの田村氏の開発への執念と苦闘の記録は氏の著作「地球はダイヤモンド」
(地湧社刊)にこと細かに述べられている。またダイヤへの正しい理解と完璧に磨かれた
ダイヤに発生する八本の矢印の星に関連する古代からの信仰、開運、招福にはじまり、精
神世界への発展などにもふれた労作で一読をお勧めする。              
      
 この本のカバ−や広告、テレホンカ−ドなどに私の作品が使用されているが、田村氏 
 が取り置き写真の中からその写真を見た瞬間、「これはピッタリだ」といわれた意味 
 は、氏の著作を読んではじめて理解できた。ここでは余裕がないのでその一端のみを 
 引用・紹介することになった。                         
       
              
    このボタンをクリックするとダイヤ選びのキ−ポイントを探る図解があります。