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音律間距離         Pentatonic Scale in Non-Equal Temperament

村山先生、今晩は!早くもお雛祭りが終わりました。毎年、お雛祭り前後には雪が降りますが、雛嵐という言葉も伝わっていますね。さて、今日は年明け早々に基本的な構造が出来上がった新音階についての分析結果をお知らせ致します。実験作品を作曲して、四つの新音階を順番に再現して聴いて参りましたが、新音階の構造的な特長を数値的に分析してみました。平均律では長調と短調という分類がありますが、ドイツ語では長調はDur(ラテン語のdurus固い)、短調はMoll(ラテン語のmollis柔らかい)と言いますが、英語はそれぞれ、majorとminorと言いますね。これは大と小という意味ですが、何が大で小かと言えば、それぞれの主要三和音の音程の大小を意味していると思います。しかし、非平均律音階では平均律で云う調性はありませんし、転調も出来ませんが、長調系と短調系に分類する研究の結果、U1とU3は長調的な音階、U2とU4は短調的な音階と言うことが出来ます。非平均律五音音階では、Eb-Db間とBb-Ab間の音程の大小がその音階の特長を決定する要因になります。以下のグラフは横軸にEb-Db間の音程を、縦軸にはBb-Ab間の音程を表示しています。このグラフの中に、U1、U2、U3、U4音階および平均律音階(U0)を配置してみると線形上に並びました。

Bb - Ab
cent U3
250
U1
200 U0

U3-U4
U2
150
U1-U4 U2-U3 U4
100
U2-U4 U1-U3
50
0 cent 50 100 150 200 250 Eb - Db

このグラフから、新音階の平均律音階からの相対的な距離がよく分かります。U1音階はU0から右上に離れており、U3音階は更に上に位置しています。U2音階はU0から左下へ離れており、U4音階はさらに下に並んでいます。U0を基点とする左右対称に並んでいることが理解されます。このことはU0から上に離れるほど長調的な表現に適した音階であり、下に離れるほど短調的な表現に適している音階であることを示しています。また、小文字で表示したU1-U4、U2-U3、U2-U4、U1-U3、U3-U4は、それぞれの組み合わせの音階間での同じグラフ上の偏移値の差を示しています。U2-U4、U1-U3の組では同じ短調系と長調系に分類されているので、Eb-Db間およびBb-Ab間の変化の差は小さいことを示しています。同様に、U1-U4、U2-U3の組では短調系と長調系の異なる分類に属しているので、Eb-Db間およびBb-Ab間の変化の差は大きく、最も変化幅の大きいのはU3-U4間であることが表示されています。このことは、これら四つの
新音階の間で変調した場合には、U3-U4間の変調による表現の差が一番大きく、U1-U4間とU2-U3間の変調がその次に大きく、U2-U4間とU1-U3の間の変調では、その表現の差は最も小さいことが表示されています。このことは実験作品を聴いての印象と合致しています。
このグラフを見て分かることは、
平均律の世界が如何に狭いかということであります。私が非平均律五音音階を発見する旅をシルクロードの広大無辺の砂漠に例える理由がここにあるのです。昨夜は久しぶりにモーツァルトのピアノ協奏曲22番と24番を聴きました。ニ年前まであんなにも心酔して聴いていたのが嘘であるかの様に、あの名曲中の名曲が如何にも単調に聞こえてしまうのです。平均律系の音楽では和声をピアノの場合は指の数だけ10個同時に並べても、非平均律系音階に比べれば奥深い和声は聞こえて来ません。非平均律系音階では、僅かに2〜3音の和声でも美しくも奥深い和声が響いて来ます。一言で云えば、これが東洋音楽と西欧音楽の根本的な相違であると言うことも出来ます。そして、東洋音楽では何故に和声学があまり発達しなかったかという問いに解答を与えているのです。それは、文明の歴史の差と言えばそれまでのことですが、東洋音楽は何千年の歴史の上にあるのに対して、西洋音楽はまだ、数百年の歴史しかないことを考える必要があります。日本の音楽も既に1500年以上の歴史を経て現代に至っているのです。中国においては周の時代に既に、あの十二音律と五声音階や七声音階等の中国伝統音楽の基礎は全て完成していました。前回の報告で、「音楽は音階で決まる」と申し上げましたが、このことを理論的にも実感的にも再確認することが出来ました。新音階の完成には、気の遠くなる様な時間が必要です。しかし、それを待っていては作曲が出来ませんので、未完成でも京都オペラの作曲を始めなければならない事をご理解頂きたいと思います。モーツァルトの音楽と雅楽や声明の絶大な影響下に生まれた新音階ですが、東洋音楽の新しい地平線を開拓する可能性を秘めています。非平均律五音音階というカオスへの新たな宇宙探検が再び始まりましたが、新音階によるこれらの実験作品をお聴き頂ければ嬉しく存じます。

この音は何処まで届く夜のそら、光よりかは遅きが故に!

So slow than light how far this sounds run in the cosmos ?

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      15 MAR 2005

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