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Report on the New Scale |
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村山先生、明けましておめでとう御座います。2005年の年頭に当たりまして、先生方の益々のご健康とご清栄を祈念申し上げますと共に、年末にお配りした実験作品に各地から寄せられたご批評の概要をお知らせ致します。年の初めに思いを強くする事は、日本人の
Identity と
Confidence
ということであります。音楽の研究と制作に於いて常に意識しておりますのは、日本人とは何かということと、日本の文化に対する自信が必要ということであります。この二つの概念が確立していなければ、グローバル化が進んでいる現代世界では生き残れないとも感じています。さて、今回の作品である、自由組曲「京愁」は新音階の初めての実験作品ですから、新しい要素を多く含んでいる為に、多くの方々は初めは戸惑われた様でございますが、何回かお聴き頂いたら、少し安心もして頂いたと思います。年末年始のお忙しい中を、ご熱心にお聴き頂いた皆様に深く感謝申し上げています。今回の実験作品の主な目的としては、新音階の採用、打楽器群による作曲、新音源の実験、合奏の試作など何れも初めての試みで、DTM(コンピューターを用いた音楽制作の技術体系)でなければ出来ない事ばかりでございます。 各地から寄せられたご感想やコメントは以下の通りでございますが、多くの方々が新しい音階を初めて聞かれる戸惑いや新鮮な驚きなどを書き送って下さいました。奈良県香芝市からは、第七曲のフルートの独奏を聞かれて、宮沢賢治の詩の一節を思い出されて、学生時代から今日までの人生を振り返られたとお知らせ頂きました。何か郷愁を誘う様な音楽的な感覚が呼び覚まされたものと推察致して嬉しく存じます。鎌倉市からは、「今回の作品は前回のものよりかなり現代音楽ですね。」とおっしゃって頂ました。曲は愁いを帯びてはいるが、やさしい感情も表現されている。打楽器曲はアフリカをすこし思い出されたし、笛の音は小学校時代に住んでおられた大阪の交差点でお回りさんが笛を吹いているのを思い出され、同時にその当時の情景も想起されたとのことであります。そして、お正月には、「きょう、海の波はジャズ〜」という素敵な詩をお寄せ頂きました。昔を思い出す何らかのよすがになったのであれば、作曲者としては嬉しい限りであります。雪の中でお正月を迎えられた、京都府美山町からは、「私も何か創作がしたくなった〜」とお知らせ頂きました。どのようなジャンルであれ、音楽を聴かれて創作意欲を呼び覚ませることが出来れば、望外の喜びであります。大阪府枚方市からは、「今度のはすこし難しいな。何回か聴いてみよう。」と新音階を初めて聞かれた驚きと微妙な音程差に慣れるまでの戸惑いをお伝え頂きました。これは皆さんに共通の第一印象と存じます。神戸市からは、「仕事とは別の人生があるとは羨ましい。かなり前衛的な試みのようであるが、どこかなつかしくも聞こえる。」とお知らせ頂きました。ドビッシーにお詳しいので、五音音階の部分では日本音楽への回帰を感じて頂けたものと大変嬉しく存じております。また、純粋なアマチュア作曲家の立場を認めて頂き、この上ない喜びを感じております。無い時間を作り出しての深夜の制作が報われる一言でございます。相模原市からは、「春秋、冬夏の曲が揃えば素晴らしい。」とのお励ましのお言葉を頂きました。また、「京と云えば、型にはまった形を連想するけれども、今回の作品では型に捕らわれない自由な世界が表現されていて、”いとおかし”。」と清少納言流のコメントを頂きました。型に嵌らないで自由な形式を求めている作曲者の意図を感じて頂き感謝に耐えません。一番気に入られたのは、第三曲のアンサンブルの曲とのことでございました。短いけれどもDTMで初めて試みた合奏曲としては嬉しい限りです。横浜市からもこの曲を評価するコメントが届いています。打楽器の曲では、秋の実りを喜んで鳥が鳴いているようにも、動物たちが野山で遊んでいるようにも聞こえるが、インパクトはかなり強かったとのご感想をお寄せ頂きました。初めて作曲した打楽器だけの作品にしては、過分の評価を頂いて喜んでいます。筝の曲については、持ち味は出ていると言って頂きました。京都オペラには日本の伝統楽器の採用は不可欠との私見に賛意を表されて、「京を思わせる伝統的な音とその自由な組み合わせによる新奇な旋律に、初めて出会った実験オペラの音は興味深い。」との印象を語って頂きました。末尾には、「時間はメロディのようであるという言葉があるが、今後の活躍が予兆されるオペラの終曲でした。」と書き添えられました。20代から80代までの全年齢層の方々からのご批評の概要をご紹介致しました。新しい音楽の研究と制作に晩年から取り組んでいる私に取りましては、この様に客観的なコメントを頂ける事は本当に貴重で有難いことでございます。今後とも、いずれの作品に関しても第二印象、第三印象についてのコメントが聞くことが出来れば、望外の喜びで御座います。わが存命中にご期待にそえる作品を残せるかどうかは分かりませんが、最長不倒距離を目指して歩みを続けたいと決意を固めている新年の抱負でございます。今年が皆様に取りまして、よいお年になります様に、改めてお祈りして御礼のご挨拶と致します。 |
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"Elegia Kyotienna" 「京愁」 CD 2004 by Litto Ohmiya 10 Jan 2005 |
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