歌な忘れそ!

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Ky-119

Forget not songs !

村山先生、今晩は! 早くも旧正月を迎えました。今年一番の寒波の到来で庭の水が凍っています。水道も外にある蛇口からは氷柱が出てきました。先ほどお風呂から上がって来ましたが、外は寒くてもイオン水のお風呂に入ると温泉の様によく温まります。通常の水で沸かしたお風呂とは全く異なり、温泉水に近づいている事がよく実感されますね。
今回は
究極の音楽について考察してみたいと思います。秋の虫達も空を飛ぶ鳥達も人類と同じ様に、言語の他に音楽を持っている様に感じられるのは私だけでしょうか? 犬や猫、猿そして原野や森に住むあらゆる動物たちは歌をうたうのでしょうか? 楽器を造って演奏するのは人類だけなのでしょうか? 自然観察の専門家の動物学者の先生方に何時かお聞きしてみたいと思っています。人類の場合は原始の昔から、歌と音楽はあったと言われています。何の楽器が無くても、手拍子で踊ったり歌ったりして来たと思われます。手で拍子を取りながら歌い踊ることは、文明の高度に進化した現代でも人類に普遍的に観察される現象であります。そして、様々な楽器が創造されて来て、現代では口琴のような最もシンプルな楽器から、パイプオルガンのように科学技術の粋を集めた巨大な楽器まで開発されています。音楽のジャンルも幅広く、あらゆる形態の音楽が世界中の町と村から絶え間なく聞こえて来ます。しかし、楽器も何もなく、只人々がいるという状況下では、音楽をしようと思えば手拍子を取って歌うしかないのであります。歌うことは音楽の原点であると同時に、将に究極の到達点ではないでしょうか? そこでは楽器も楽譜も何も必要ありません。言葉は通じなくても、人々は言語を超えて一緒に歌うことが出来るのです! 七つしかない世界共通の音の自由な順列と組み合わせにより、無数の歌が生まれます。音楽こそは人類共通の唯一の言語と言えます。楽器の演奏も竪琴ひとつから100人編成のオーケストラまで規模も様々ですが、歌うことが共通の目的であることに変わりはありません。特にモーツァルトの音楽の場合には、歌うことが全てに優先して第一義であることを感じることが出来ます。そして、歌うことが音楽の究極の目的であることを教えられます。モーツァルトの作品を演奏することが易しい様で最も難しいと言われるのは、如何に技術を持つ演奏者でも歌う心が無ければ、単なる機械的な演奏に過ぎないからであります。「モーツァルトは歌う様に弾け!」と昔から言われて来たのはこの事に言及しているのであります。
さて、村山先生、オペラは
歌で綴る物語でありますから、文字通り歌がすべてであります。その歌を伴奏する音楽は、誰でも歌い易く美しい旋律で一度聴いたら忘れられない様な音楽でありたいですね。歌そのものも平易な言葉でも深い意味を持ち、聴く人に何かを訴えるメッセージが込められていなければなりません。このことは言うは易く、実際に作詞・作曲するのは至難の技であります。もしも簡単に出来るのなら、もう誰も新たに作詞・作曲をする必要は無くなっているでしょう。日本語の歌に関しては特にそうであります。60年前に全土が焦土と化したこの国でも、戦後の復興は歌と共に始まりました。楽器もハーモニカ一本あれば良かったのです!何時でも何処へでもポケットに入れて持ち運べるハーモニカは、復興にかける若き日本人に忘れがたい郷愁と感動を与えてきました。私も子供の頃はよくハーモニカを吹いていました。新しい京都オペラでも、何処かでハーモニカの独奏でひとつの場を作りたいと考えています。そして、この場では舞台の上で演奏することが大切であります。私の辞世の歌である、「紫の花の心を知りたくば、歌な忘れそ国亡ぶとも!」はこのことを伝えたい為に詠まれました。この短歌の構想は学生時代に既にありましたが、この歌に落ち着くまでにはやはり40年以上を要しました。初々しい若き学徒の時代から、黄昏に向かい始める初老の紳士になるまでの人生哲学の結語でもあります。この歌の歌碑は、近々わが庭の一角に父の塾の記念碑と共に建立する予定でありますが、紫の花の歌とは、京都から世界に発信しようとしている、日本語の新しいオペラのことであることは、村山先生にはご説明の必要もないと存じます。辞世までの余生の間に、どんな歌と音楽を作れるかは分かりませんが、この歌の通りに精進したいと願っている今日この頃であります。後は最善を尽くして、全てを主に委ねる他はありません。

紫の花の心を知りたくば、歌な忘れそ国亡ぶとも!

Never forget old song to know the heart of flowers even if the nation ruined !

English

8 Feb 2004 Litto Ohmiya

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