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Acoustic Tolerance Test 1000 |
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村山先生、今晩は! 早くもクリスマスを迎えました。私達の新たな飛躍が期待される2004年も既にカウントダウンが始まりました。先生との往復書簡集も来年で5年目を迎えます! 新しい日本語オペラを開拓せんとする先生と私の共同研究の貴重な記録でもあります。村山先生がバッハから出発されているのに対して、私はモーツァルトに原点を置いています。勿論、モーツァルトもバッハから音楽人生を始めていると思います。村山先生と私の音楽作品には個性と傾向に対照的な特長の差異がありますが、新しい日本の音楽、特に新しい日本語オペラを開拓しようとする目的は共通であります。山田ー団の偉大な先人が残した課題を少しでも克服出来る様に、わが余生の全能力を投入できる環境を早く造りたいと念願しています。 さて、今年の還暦記念に制作した「ヒロリーナ組曲102」ですが、幸いにも全国の皆様から暖かい共感と励ましを頂きました。私自身は作曲以来、既に700回まで聴きました。日に3回で一ヶ月で100回、7ヶ月で700回になる計算です。1000回に到達するには更に3ヶ月掛かります。来年の3月末で丁度1000回になる予定です。私の唯一の研究方法が、名曲の名演奏を100回単位で聴き続けるということは何度もお話致しました。最近、長男の質問に答えて申しましたのは、「500回を一つの基準にしなさい」という事であります。モーツァルトの名曲なら、やはり500回前後から少し分かり掛けて来ます。1000回に近づけば、自分なりに十分に体感出来る様になると思います。自分の作品であっても、他の作曲家の作品と同じ様に客観的に聴かねばなりません。自作品には思い入れや期待が大きいので、尚更回数多く聴き遂げる必要があります。1985年に作曲したピアノ曲、「古都憂色」と「天上水舞」は800回以上聴き、900回までにその限界を分析出来ました。その耐聴テストの結果が今日の「ヒロリーナ組曲102」誕生の原動力にもなっているのであります。 では何故に500回から1000回までも聴き続ける必要があるのでしょうか? モーツァルト先生なら、只の一回聴くだけで十分な事も、私達凡人には一回から数回聴いた位では何も解らないからであります。モーツァルト先生が一回で済む処を、私達は100回単位で聴き続けなければ、作曲者の楽想や感性を感得することが出来ないのです。また、凡人である私達にはそれ以外に方法はないのであります。それも只漠然とBGMとして聴くのではありません。全身全霊を傾注して聴き続けねばなりません。モーツァルト先生がその作品を作曲した時の、楽想と感性に触れて作曲過程を追体験出来ればこれ程の喜びはありません。その何者にも替え難い体験は、その人の音楽人生に決定的で、計り知れない影響を与えるものでありましょう。この地道な研究方法は、兎さんの様にスマートで速くもなく、亀さんの様に遅く効率の悪い方法でありますが、私には唯一の方法であり、実際に40年間続けて来た方法なのであります。こうして永年聴き続けて来た結果、最近になって気付いた事ですが、私自身の耳朶が一昔前の写真に比べて少し大きくなり傍だって来た様に見えます。習い性となるとはこの事で怖い様にも思います。そして、もし1000回の耐聴試験に合格すれば、100年先に於いても古典作品として音楽の歴史に残りうる可能性が初めて出て来るのであります。 因みに、これまで300回以上聴いて来た作品は、それ程多くはありません。学生時代にベートーベンは、唯一のヴァイオリン協奏曲と交響曲第三番だけです。最近ではモーツァルトのピアノ協奏曲20番、21番、22番、24番とオペラ「フィガロの結婚」は8ヶ月間も毎日聴きましたが、まだまだ続けたいのにモーツァルト全曲マラソンが何時まで経っても終わらないので、仕方なく次に進んだという事情があります。「魔笛」と「コシ・ファン・トゥッテ」も300回近く聴きました。「ドン・ジョヴァンニ」はまだ100回ですが、聴き続ける途中でしかありません。モーツァルトのこれらの傑作は、例え1000回以上聴き続けても、聴き尽せるものではありません。私達凡人の耳ではそれまでに寿命が尽きてしまいます。この宇宙では塵の様に微小な存在の私達凡人ですが、モーツァルトの音楽作品を知ることは、大宇宙の星座を仰ぎ見る思いにも通じます。私も聴き続けながら、残された短い余命も何時かは終わることでしょう。新しい日本語オペラを何曲残せるでしょうか? 地を這う一匹の亀がとんでもない夢を持ったものです。歩みは如何にも遅いですが、これでも懸命に兎さんを追っかけています! 祈り続けるこの亀に、主が見るに見兼ねて、救いの光で導いて下さることがあれば、奇跡も起こるでしょうか? |
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25 Dec 2003 Litto Ohmiya |
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