秋の虫の音楽(3)

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Mult-Tempo Song of Autumn Worms(3)

村山先生、お早うございます。今年も早や11月になりました。時節の移り変わりの早さに驚いています。わが庭の虫達のコンサートもいよいよ今年のフィナーレに近づきました。気温の下がった夜には散発的にしか聴こえて来ませんが、気温が少し上がるとやや賑やかになります。この時期になると大編成のオーケストラではなく、室内楽の規模に縮小されているようですね。冬の到来と共にやがて虫達の音楽も聴かれなくなります。滅び行く者の美学というか、何とも切なく美しい音調ではありませんか。夜寒に身を曝しながら聴いていると、一匹ずつの音色やテンポに僅かに差があることに気付きます。秋の期間中に毎夜、庭で一晩中聴いていればもっと聴き分け出来るかも知れませんが、まだそこまでは実験できていません。固体識別法で秋の虫達の音色を聴き分ける聴力を開拓出来れば、音楽の研究や制作に新たな分野を切り開くことが出来ると考えています。
さて、この度の「
ヒロリーナ組曲102」を京都と全国の友人にお配りした反応の一部を前回ご紹介致しましたが、その後にも感想を寄せていただくお便りが続いています。今度は男性の方からも来ています。定年退職されて京都の山間部の診療所で勤務されている男性の同級生からは、美しい絵葉書で「以前から作曲のことは聞いていたので、解説を読みながら興味深く聴いています」とのお便りを頂きました。京都時代の元同僚の男性の後輩からは、パソコンで印刷された丁寧なご返事がありました。「何回となく聞いていると、時空を超えて幻想旅行をしている様な気持ちになりました。20年前にヒットした女性シンガーの歌の様に、心の中で色々な所に行き、辿り着いた所で好きなことを考えてしまう、そんなひと時を過ごすことが出来ました。オペラを鑑賞している時は場面設定があり歌もあって、ある程度イメージは限定されますが、ゴロンと横になって目を閉じて、解説からは自由な心で聞きました。とは言っても第一楽章は解説を読まないで聞いた最初から、何故か桜の木が浮かんで来ました」と詳しいコメントを頂き感謝しています。この組曲を聴いて、果てしない幻想の中を旅するような反応を示して頂いたことは、作曲者としてこれ程嬉しいことはありません。作品は出来上がった瞬間から、作者を離れて一人歩きするものです。そして、作曲者自身も聴き手の一人に他なりません。聞く人の感性によって色々な反応が生まれます。その可能性の高い作品こそ癒し効果も含めて重要であります。札幌の大学で教鞭をとっておられる男性の同級生の教授からは北海道の雄大な写真と共に、「早速聞いてみたが、心を癒されるような音楽で素直に聴くことが出来た。ただ、物語がわからないので、すこし短調な印象もあります。機会があれば、オペラの全貌を知らせて下さい」との感想を頂きました。確かにオペラの物語が分からないと十分な鑑賞が出来ないと思いますが、オペラの完成にはどんなに急いでもあと3年は掛かるので、今暫くお待ち頂きたいと思います。還暦と長女の三回忌の鎮魂のために作曲した経緯もあるので、癒し効果祈りの効果を指摘して頂くお便りが多かったのは事実であります。また、高校の同級生でホテルの社長をしておられる男性は、地元の他の集会でご一緒した時に、「綺麗過ぎる!悲しいよ」とわざわざコメントを伝えに来てくれました。初めて聴かれた時に、「京都が舞台であることは直ぐに分かった」とも言ってくれました。毎日お休みになる前に奥様と聴いて頂いているとの事で感謝申し上げます。この様に殆どの方々が、「きれい、悲しい」と感じて頂いた様で、作曲者として心から嬉しく存じます。関西の大新聞社でデスクをしておられる、神戸在住の友人からは、「ドビッシーが描いた王朝絵巻のようで、心に深くしみ込んでくるようでした。オペラになれば趣が変わりそうでそれも楽しみです」と温かい批評を寄せて頂き感謝申し上げます。ドビッシーは五音音階を用いたり、東洋的音階で作曲もしているので、関連性を感じて頂けたことはこの上ない喜びであります。同じく神戸在住の古い知己で古代史の大家からは一言、「レクイエムを聴いているような感じがした」と知らせて頂きました。
帯広の大学で環境運動論をテーマに研究を続けておられる新進の女性研究者の方からは、「ここ数回、仕事をしながらのバックミュージックにしていますが、心地よくリラックス出来る曲です。作曲をされているとは伺っていましたが、こうしてCDを流れる音に触れると、また別の横顔を見せて頂いた様で、大変嬉しく思います。ただ、何事にも感動し、自ら動く強さと、強さ故の暖かいまなざしは、分野を違えても共通しているのだなとも感じました。地域に根づきながら、五感でさまざまなメッセージを伝えていく姿は、私にとってもたいへん新鮮です。学生時代から温めてきたオペラの制作が、どの様な形になるのか楽しみです。夢を実現させてゆく過程に、この
ヒロリーナ組曲102があるとしたら、鳥居をくぐった向こう側にあるのはどんな映像なのでしょうか? CDジャケットを見ながら、オペラ舞台に降る桜を想像するのも楽しい今日この頃です。これからも良い音色の人生を絡ぎ、奏でて下さい」と長文のお手紙を頂きました。彼女は1983年から13年間続いていた「織田が浜運動」の調査研究に遠路何度も当地に足を運んで頂いた経験をお持ちです。私の音楽作品を初めて聴かれて、環境運動で見た私のプロフィールに共通の要素を見い出されたとあるのに接して、分野を越えての作者の性格は隠せないのかなとの印象です。作者自身としてはそれが分からない程に変身しなければと考えているので、まだまだ精進が及ばないのではと反省もしますが、職業の臭いだけはしてはならないと若い頃から心がけで来ました。アマチュアは職業からは自由でなければならないとの私の人生哲学です。
今日までに届いた各方面からの感想をご紹介致しましたが、何れも暖かい反応をお寄せ頂き心から感謝申し上げています。男性の方々の反応は女性よりやや遅れて届きました。
女性の反応は直感的に速いのに比べて、男性の反応はゆっくりと大きくなるようです。定年を迎える2008年までにこのオペラを完成するには毎日毎夜、休むことなく精進を続けなければゴールは近づかないと心を引き締めています。40年来の夢を実現するには、自分の小さな力では達成できないと思います。モーツァルト先生を唯一の教師として更に聴き続ける過程においてのみ、その奇跡も起こり得るものと主に祈る毎日です。


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1 Jan 2004 revised Litto Ohmiya

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Natural concert of autumn worms in my garden 2003

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NEW OPERA FROM KYOTO

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