モーツァルト効果

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Ky-105

Mozart Effect

村山先生、今晩は!今年もまた、ジャズタウンの熱い季節がやって来ました。8月16、17日のメインイベントに向けて、既に毎週の様にプレイベントが始まりました。今年から現場録音も始めましたので、カメラと録音機と一人二役で忙しくなりました。私自身の音楽活動は、還暦記念のCD制作に続いて、その音楽に歌詞を付ける為に繰り返し聴き込みを毎晩しています。
ところでモーツァルトの全作品を聴き始めて3年目になりますが、私の概念ではモーツァルトを聴き続けると、音楽に対する感性が急速に呼び覚まされて、作曲や演奏をする際にも、技術だけでなく豊かな感性が自ずと醸成されて行く事に気付いていました。この経験を、モーツァルト全曲マラソンの途中ですが、纏めてご報告して見たいと存じます。全曲マラソンを終えるのは何時になるか分かりませんが、もし終えられたら、その時にもう一度同じテーマで考察は致します。
私が呼ぶところの「
モーツァルト効果」 Mozart Effect とは次の様な概念であります。
(1) モーツァルトの好きな曲を続けて100回以上聴き続ける
(2) 直ちに演奏や作曲における著しい進歩が見られる
(3) 音楽理論に精通しなくても、自然に楽しく作曲できる様になる
(4) 更にモーツァルトを聴き続ける事によって、究極のテンポを表現出来る可能性が生まれる
(5) ABA形式やソナタ形式などの音楽の基本形式を踏まえた上での、即興演奏が可能になる
これらの条件は、モーツァルト先生ご自身が何の準備もなく、完全な即興演奏を披露出来たという歴史的な事実を再現できる可能性の実験でもあります。多くのモーツァルト研究の専門家が指摘しておられる様に、モーツァルト先生は作曲するのに考えたり、推敲を繰り返したりする必要が無かったという歴史的事実があります。モーツァルト先生は、自然に湧き出づる楽想のままに楽譜に記録されたということであります。我々凡人がどんなにしても万分の一も真似の出来ることではないが、真剣に聴く回数を重ねるに連れて、その人にとっては、それなりの効果はあるという事実を私は強調したいだけであります。そのためには100回では足りません。何百回から1000回までも必要であります。この40年間、私の
唯一の音楽研究方法でもありました。モーツァルト以外の作曲家の作品にそのような効果があるかどうかは私は知りませんし、それを実験する時間の余裕もありません。今言えることは、モーツァルトの名曲の演奏を繰り返し聴き続ければ、直ちにそれなりの効果が直ぐに現れるという事だけは確かなことなのであります。では、何故モーツァルトの音楽にそのような魔法が隠されているのでしょうか? それは誰も分かりません。生前のモーツァルト先生ご自身にお聴きするしか分からないことではないでしょうか。専門家の多くが語っている様に、モーツァルトの楽想の自由度の高さ、自然な楽しさ、絶妙のテンポの変化など、モーツァルト以前にも以後にもその様な作曲家は現れていません。モーツァルトの音楽は自然の一部であると言えるというのが現代の結論であり、それ故に繰り返し聴き続けても決して飽きることはなく、自然の風の様に心地よいからであります。
この
モーツァルト効果に気づいてからは、多くの音楽家にそのことをアドバイスして来ましたが、実際にその通り出来る人も少ない様です。もし私の言う通りに例え100回でも聴き続ければ、直ぐに演奏でも上達が期待されるのに、演奏活動に忙しい人ほど私の言に耳を傾ける人は少ないのです。ピアニストに勧めているのは、あの偉大なピアノ協奏曲第24番ですね。私は言うのですが、野球でも大リーグと日本のプロ野球を比較して貰いたい。大リーグの名選手は練習などはあまりしないのに凄い記録を残せますね。これは自分と同じレベルの練習を幾ら熱心にしても上達は望めないことを証明しています。音楽の演奏でも同じことではないでしょうか。自分のレベルの練習を何十時間練習しても、何の上達もないのです。芸術では上には上があります。自分よりも遥かに上のレベルの音楽を絶えず聴き続けないと更なる向上は有り得ません。無意味な猛練習は自己満足を満たす為にしか役に立ちませんね。かの有名な「徒然草」に、「先達はあらまほしきものなり」と端的に述べられている様に、何の道でも先生が必要でありますが、自分よりも遥かに高い水準の先生に付かなければ上達はありません。現実の教師だけでなく、一枚のCDでもよい。モーツァルトは全ての音楽家の普遍的な先生でありますから、どんなジャンルの音楽家にとっても最も重要な作曲家であります。それ故に現代に至る全ての音楽の流れは、将に200年前にウィーンで完成したモーツァルト山脈の分水嶺から流れ出た支流に他ならないのであります。モーツァルト全曲マラソンの途中ですが、音楽においては聴くことが全てであり、弾くこともまた聴くことの延長線上にある事を教えてくれるモーツァルト効果を強く意識する今日この頃です。

先達は有り難かりき古の、師に学びてぞ今に至れる!

Teacher of genius is also a genius who can educate him to the highest !

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15 Jul 2003 Litto Ohmiya

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