この にそえて ・・・ no.223                           


 

 表桜・・・  元禄元年(1816)6月、祖谷に身を隠していた安徳天皇が、平家の武士、五氏に迎えられて暫くこの地に

   身をおかれた。戦況は源氏優位にあり、後に阿波から屋島に入った源義経の奇襲で平氏は窮地に追い込まれる。

   この直前、幼帝は平知盛、平教経らに迎えられ、半年を過ごした仮宮殿を後に讃岐の須田から長門に向けて旅立たれた。

   哀しい最期の旅路となる事を知らず・・・

   安徳天皇御在所の「切山伝説」が伝わる切山は、愛媛と香川の境にある金見山の中腹から山頂近く、鬱蒼と茂る樹木と

   深い霧に覆われた集落である。現在は法泉寺のある香川県大野原町から峠越えの道が通り通行の便は良くなった。

   寄棟造茅葺の「真鍋家」は十七世紀末に建てられたもので、県内では最も古い民家として国の重要文化財になっている。

   近年に修復されて、この地の伝説とともに歴史の遺物として人々に手厚く受け継がれているようだ。

   その真鍋家の裏手に大きな山桜がある。斜面からスラリと伸び上がった美しい樹形で、案内には真鍋家の住宅と同じ程

   の齢であると記されている。真鍋家は表(おも)という名で知られており、これが桜の名の由来であるそうだ。

   枝の欠損はあるが樹勢は良いようで、歴史の地をその美しい花で永く彩り続けることだろう。


表桜(おもざくら)・・・目通り周囲 3.1m/樹高 15m/樹齢100年以上/愛媛県川之江市金生町山田井切山

《2003年の開花は4月上旬になりそうです。》


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