この にそえて ・・・ no.222                           


           

 三角寺の榎・・・  白河法皇の伝説が纏わる法皇山脈は、東予一帯の市町村に跨り、黒々と萌

  えた針葉樹の葉色を纏って長く山脈を連ねている。空気の澄んだ日には、その中に点々と広葉樹

  の葉が造る明るい緑の紋様が現れ、意外な程に綺麗だ。その明るい模様の中に四国霊場第65番

  札所、三角寺がある。燧灘から一気に登る坂道は、歩き遍路にとってはなかなかの難所だろう。

  弘仁六年(815)弘法大師が当寺に三角の護摩壇を築いて21日間の降伏護摩の修行をしたことが

  寺名のもとだといい、護摩壇跡の三角の池横には、近年まで巨大な老杉が立っていたそうだが今

  は無い。現在の第一木である榎は県内でも五指に入る程の立派なもので、枝折れはあるがどっし

  りとした主幹は健在、一面にびっしりと蔓延った苔がその永い樹齢を物語っている。境内には他

  に大きな銀杏やムクノキ、山桜の老木等があり緑豊かな所。遍路はここで伊予の行程である菩提

  の道場を終え、涅槃の道場といわれる讃岐路に向けて、また長い坂道を下っていく。

  「これでこそ 登りかひある 山桜」 小 林 一 茶    (寛政七年(1795)来山時に詠む)


三角寺の榎 目通り周囲 5.2m/樹高 23m /枝張り15m/愛媛県川之江市金田町三角寺・三角寺