モーツァルト全作品(2)

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Marathon listening to Mozarts Werke (2)

村山先生、今晩は。今日は3月15日に発行された今治市医師会会報に掲載された私の随筆をほぼ原文のままご紹介致します。「モーツァルト全曲マラソン」と題する全文は以下の通りです。
クラシック音楽を19歳から本格的に聴き始めて、丁度40年になりました。京都での学生生活の時から、現在の故郷での勤務医時代まで、実に長い道程でした。一番最初に出会ったのは、ベートーベンの交響曲第3番とバイオリン協奏曲でした。当時は現代の様なCDもなく、LP時代でしたので学生生活で買える範囲の装置しかありません。録音もソニーのオープンリールの録音機でした。音質は悪くても、何百回と聴いたものです。交響曲第3番は、当時パリ管弦楽団が京都との姉妹都市の関係で来日した時の公開録音で、指揮はアンドレ・クリュィタンスでした。交響曲の基本形式を完全に表現した標本の様な曲ですが、その簡潔な表現法を入門に選びました。
バイオリン協奏曲はベートーベンの場合は只一曲しかないのですが、ワルター指揮のコロンビア交響楽団、バイオリンはジノ・フランチェスカッティでした。この曲も構成は極めてシンプルで、演奏者によって深い表現が求められる難しい曲ですが、当時の日本人で弾ける人は江藤俊哉位しか居ませんでした。このバイオリン協奏曲との出会いは、学生時代のある夜8時頃、京都河原町の「シミズ」というレコード店でLPを探している時に、閉店間際だったので一人だけの客の私にご店主が、「この店の全レコードの中で、一枚だけ残せ言うたらこれだけや!」と渡してくれたのが、このバイオリン協奏曲でした。深く感激し且つ感動したこの曲のCDを何年か前に見つけました。音源となったマスターテープは同じものであるのに、30年振りに聴いた感想に最早学生時代の感動は戻って来ませんでした。その懐かしさよりも、何故感動が戻らないのかの方が気になります。色々考えてみると、この40年の間に、私の耳はベートーベンを遥かに超える高い存在にやっと巡り合うことが出来たからと理解できました。その作曲家とは世界中の誰もが知っている、あのモーツァルトだったのです。世界の音楽史上で、千年に一人しか出現しないという天才中の天才作曲家モーツァルトの明るく楽しい且つ美しい音楽に辿り着くのに、私の場合は38年間を要しました。この世で生ある間に到達出来たことは、わが人生で最大の喜びであります。
現在は新しい順にモーツァルトの全曲を聴くマラソンを始めましたが、CD128枚をよく聴くことは並大抵の事ではありません。現在はオペラ「フィガロの結婚」と「ピアノ協奏曲第20−24番」を繰り返し聴いています。毎日毎夜、睡眠中以外はモーツァルトの音楽の中にいて、地上で最高の幸福感を覚えています。気持ちが落ち込んでいる時、人生がいやになった時には、モーツァルトの音楽をお聴き下さい。きっと明るい光明を見出されることでしょう。モーツァルト全集は1991年にポリドールから発売されています。(2003年1月10日)

オペラなる調べ極めん花嵐、水面に揺らぐ桜天国!

Cherry storm comes down on to the water surface of the sacred Lake with music !

English

28 Mar 2003

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「今治市医師会会報」 2003年3月15日号 Nr.178

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