障害児のための音楽療法

music forum

Ky-097

Music Therapy for the Handicapped Children

村山先生、今晩は!毎週全国をお忙しく飛び回っておられる由、ご同慶の限りであります。色々な処を訪問されると、作曲のイメージが膨らむ様な風景を体験されるのではないでしょうか? 
さて今回は音楽療法についてご報告致します。欧米では既に音楽療法は数十年の歴史があるそうでありますが、日本では最近になり俄かに脚光を浴びて来た様ですね。今回入手した文献には音楽療法の現場録音のCDが二枚付いていましたので、何度か聴いて見ました。ここで私は意外な情景に遭遇しました。それは
即興演奏音楽療法の根幹を成していると云う事実を初めて認識出来ました。クラシック音楽でも即興演奏を復活すべきであるという考えに到達してから、かなりの歳月を経ていますが、期せずして即興演奏が障害児の音楽療法に実際に応用されているのを聴いて大変嬉しく思いました。障害児の音感も鋭いものがあり、音楽の過程を修了して即興演奏も出来るスタッフでないと、音楽療法の現場では務まらない事も分かりました。では、CDに記録された音楽療法の現場録音から幾つかをご紹介します。
障害児(児童と略す)が何かの打楽器、例えばトライアングル、ドラムまたはキーボードなどを自由に叩いているのを暫く聴いていて、治療者が鍵盤楽器などでそのリズムをフォローして、多少のメロディーも付ける。鸚鵡返しに続くだけでなく、コンチェルトの様に対話形式に繋いで行くことも出来る。単純なリズムやフレーズを繰り返して行くと段々トーンも上がって来て、児童も興に乗って来てスリリングな音楽的な対話が実現して行きます。そしてある一定の興奮に到達すると児童も治療者も完全に共鳴して大きな歓声と喜びに包まれていく様がリアルに記録されていました。
この現場は作曲の現場にも通じるものがあると思います。長い曲や形式を完全に整えることは出来ませんが、短い即興曲は十分に誕生する余地があります。協奏曲に於けるソロとオーケストラの対話の原点の様な情景を思い浮かべます。或いは音楽に於ける対話と云う方が適切かも知れません。映像はありませんが、その時の児童達の喜びの表情が目に浮かぶ様に感じます。音楽には演奏者と聴衆の共鳴だけでなく、ソリストとオーケストラや伴奏者との共鳴も重要であることが分かります。
障害児だけでなく、一般児童に於いても彼等は我々大人よりは遥かに鋭い音感を持っていると言われていますね。新生児の内耳と大人の内耳がほぼ同じ大きさであるとNHKのクイズ番組で教わりましたが、胎生の時から赤ちゃんは音を聞いているのですね。音楽を聴くのはお腹の中にいる時から始めるのがよいと云うのは現実的です。楽器の練習は概ね4歳からが常識ですが、聴くのは早ければ早い方が良いと云う見解は当然です。
その他にも児童と楽器を替えて色々なケースの音楽療法の実際の現場録音が二枚のCDに記録されています。痴呆性老人への音楽療法も始まっていると聞いています。精神科領域での音楽療法も実施している病院もあります。最近は「癒しの音楽」というジャンルのCDも沢山発売されていますね。モーツァルトの音楽は沈む心を明るくし生きる元気を与える賦活系の音楽の代表に位置付けされている事はご周知の通りです。言語よりも根源的でユニバーサルな通信手段である音楽、21世紀は
音楽が主役の時代と言えるかも知れません。
音楽は治療効果だけでなく、世界平和や地球環境を改善するためにアピールする力を持ち、また勇ましい行進曲で軍国主義を鼓舞する効果もあります。しかし、音楽は心の調和と世界の平和の為だけに活躍して貰いたいと考えます。医療や福祉の現場で何時か音楽療法に従事出来たらと考える今日この頃ですが、音楽に関する夢がまた一つ増えました。

みそぎ川千年流れてとこしへに、わが歌のせて黄泉の国まで!

The Misogi River has flown more than 1000 years to bring my songs to Heaven !

English

28 Mar 2003

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「障害児の音楽療法」 K.エイゲン著 中河豊訳 ミネルヴァ書房 2002

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"Paths of Development in Nordoff-Robbins Music Therapy" by Kenneth Aigen 1998

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