モーツァルト全作品

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Ky-084

Marathon listening to Mozarts Werke

村山先生、今晩は!桜も早や散りましたね。いよいよ新緑の季節で5月生まれの私は一年中で一番嬉しい季節の到来です。1991年に制作されたモーツァルト大全集にはほぼ全作品がCD128枚に収録されています。演奏は1980年代までのデータが多く往年の名演奏を集めています。モーツァルトの全作品を聴くことは容易な事ではありませんが、聴き始めないと聴き終わる事も出来ないのでともかくも始めることになりました。七つの分野に渡っていますが、オペラから聴き始めました。このマラソンは何時終わるかも分からないので、何回も聴き直すことは出来ませんので取り敢えず一回ずつ聴いて参ります。
オペラは17曲が収録されています。声楽曲は膨大ですがその内91曲、室内樂曲は68曲、ピアノ曲は61曲、協奏曲は55曲、管弦楽曲は97曲、交響曲は47曲で合計436曲です。オペラは多数の楽曲の総合作品ですから一曲で計算することは出来ません。しかしこれほど多数の音楽をあらゆる形式を網羅して短い生涯の間に作曲するということは人間技とは思われません。神が与え賜うインスピレーションのままに書き留めたと言う方が正しいのではないでしょうか。アルノンクール先生も言っておられる様に、考えて作曲するという過程ではありません。アルノンクール先生は取り組む毎に新しい発見をして、モーツァルトの音楽の奥の深さに驚かされると述べておられます。私達のような凡人がモーツァルトの全作品を一度ずつ聴いたところで何程の事を理解出来るでしょうか? でも38年掛ってやっとモーツァルトに辿り着いたのです。せめて一度なりとも全作品を聴き終えて置きたいと念願するだけです。その全作品についての感想を全てご報告することも出来ません。何百回でも聴きたい曲に出会えれば、その一部は例え千回でも聴いて見たいと思います。元来、聴くだけしか能のない素人の私ですから、気に入った曲は百回単位で聴いて参りたいと思います。聴く順番は制作年順の反対に最晩年から少年時代へと聴いて参ります。それは完成された最晩年のモーツァルトの作品が、何歳の時にその萌芽があり何歳で完成されたのであるかを見極めたいとも思うからで御座います。
今月から始めるこのマラソンは、「皇帝ティートの慈悲」から聴き始めました。ドイツ語圏の主要オペラハウスの番組表をインターネットで見ると、このオペラは最近に到って見直されている様で、頻繁に登場しています。ウィーン、ミュンヘン、チューリッヒ、プラハ、ザルツブルク、ベルリン等のオペラハウスのホームページを定期的に見て廻っていると、現代のオペラ演目の中でもモーツァルトのオペラ作品が上演の要の位置を占めていることが良く分かります。モーツァルトの没後211年に当たる2002年ですが、「魔笛」「コシ・ファン・トゥッテ」「ドン・ジョヴァンニ」「フィガロの結婚」「後宮からの逃走」「イドメネオ」は定番として世界中のオペラハウスで途切れることなく上演され続けています。中でも「コシファン」の登場を特に喜んでいます。台本の内容が当時は理解されず、初演時に何回か上演されてから長い間忘れられていましたが、近年になり再認識されて現代では、台本の内容も現代的でモーツァルトとダ・ポンテには先見の明があり、その音楽は常に新しく、モーツァルトの全オペラの中でも最も進歩したダイナミックな音楽で綴られています。音楽的には私は「コシファン」が一番進歩的であり、何世紀を経ようとも色あせることはないと信じる者であります。
協奏曲の分野はモーツァルトの独壇場でもありましたので、世界中の誰もが知っている数多くの名曲が残されています。オペラだけでなく協奏曲の形式を完成させた歴史的貢献は大きいと思います。モーツァルトが最も得意としたオペラと協奏曲には共通点があります。諸井誠先生が述べておられる様に、どちらもオーケストラを背景に歌手が歌い、独奏者が演奏することでありますから、ソリストとオーケストラとの対話の進行によってドラマを表現する形式と言えるからであります。次に交響曲を47も書いたことには驚嘆の一語ですが、学生時代によく聴いたベートーベンの僅か九つの交響曲に現れる曲想は全て既にモーツァルトの交響曲の中に見出す事が出来るのに気付いて驚くと共に、20歳から聴き始めて38年掛ってやっとモーツァルトに到達できた事を嬉しく思うと共に、振り返ってその亀の如き遅い歩みに呆れ果てるばかりであります。
モーツァルトは生まれながらにして天才であっただけでなく、完全な音楽教育を父から受ける過程で、その
千年に一人と言われる天才としての能力を自己開発して行ったのであると信じます。幾ら天才的能力があっても素晴らしい教育を受けない限りその能力が開花することは有り得ません。父だけでなく、ハイドン、ヘンデル、バッハの子孫達、グルックやサリエリという同時代の作曲家からもよく学んでいます。その様な天才教育を実行したレオポルドの教育者としての偉大さに脱帽する他はありません。時代も分野も異なりますが、イチロー選手と野茂投手を見出して育てたという仰木監督の46年勤続の野球人生も称賛すべきものがあります。モーツァルトは当時の全ての音楽形式を修得した上でクラッシク音楽の集大成を成し遂げて、完全に独自の音楽世界を構築して行ったのではないでしょうか。バッハ無くしてはモーツァルトも有り得ないかもしれませんが、モーツァルト無くしてはベートーベンを始めとする後世の作曲家達も有り得ないのであります。モーツァルト親子が居なかったら、現代に到るクラシック音楽も成立し得なかったのであります。私が音楽史上の分水嶺と申し上げる理由がここにあります。果たしてモーツァルトの全曲を聴き通せる事が出来るかどうか自信はありませんが、始める事だけはご報告出来ましたことを喜んでいます。

神童は千年にひとり現れし、ミューズの声を今に伝えん!

Mozart is a millennial genious so history will never meet him during next 1000 years !

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4 APR 2002

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Mozarts Werke CD 128 by Polydor 1991

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