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Sound of water and expression |
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村山先生、今晩は!今日は4月1日ですが、桜が既に散り始めました。この様なことはこの100年間では有り得なかった事であります。未曾有の天変地異が接近している事を予感させる春景色で御座いますね。さて前回に引き続いて、音の問題について考察を進めました結果をご報告致します。音は一度発せられると止める事は出来ませんし、15度Cでは秒速340mで空気中を伝播して行きます。水中ではその約5倍の秒速1500mで伝播致します。音楽における唯一の物理学的要素である音は一度この宇宙に発せられると止まる事無く四方八方に減衰しつつ伝播して行きます。余程大きい音で無ければ月までは到達することも有りません。空気の希薄な宇宙空間では音はどのような伝播をして行くのでしょうか? 宇宙でコンサートが開かれる時代になるのであれば気になるところであります。また、水中でのコンサートでも地上とは異なる音質に変換されてしまうでしょうね。このように考えるとこの地上の空気中の音であるが故に、音楽という芸術が成立したことがよく解ります。音の世界の研究も宇宙空間の探索の様に、無限のミクロとマクロの世界が未知のまま存在している様に思えてなりません。 今日のテーマは水の音でありますが、「水のオペラ」の作曲のご参考にとデータを集めました。日本語には水に関する擬音語がたくさんありますね。「さらさら」、「ざーざー」、「しとしと」、「ごうごう」、「しゅーっ」、「ぐつぐつ」、「ばしゃーん」、「かりかり」、「ぴちゃぴちゃ」等など。液体、気体、固体と水の三相に応じて音も変わって行きますね。三相の内、液相の水が人類には最も接触が大きいと思います。以前にも指摘申し上げた様に、水の三相が同時に存在出来るという地球上の稀なる存在である事も申し上げました。それは海の上に氷が浮かんで水蒸気で満たされている空間が現実に存在するからであります。水蒸気は原則として目には見えないけれども、大気に浮かぶ雲は水蒸気が細かい水滴に変化した結果であります。変幻自在な雲の運動は取りも直さずそれは水の動きであります。太古から流れて止まない大河の水は海を目指して流れ続けています。海は地球の表層の大半を占めていますが、海と陸が出会う処が渚であります。渚は穏やかな日ばかりではなく、大風が吹けば何メートルもの怒涛が海岸に押し寄せて来ます。大地震では恐ろしい津波がつきものであり、一瞬にして海沿いの町や村を飲んでしまいます。海には波が絶えず発生して、干潮と満潮を日に二回づつ繰り返します。河には波はありませんが、低い方に向かって休む事なく流れ下ります。大きい湖では海の様に大きくても干満は海ほど大きくはなりませんし、波も風が無ければ殆どありません。私が青春時代を過ごした京都の鴨川と現在住んでいる瀬戸内海沿岸では、水に関しては全く異なる環境であります。鴨川では静かなせせらぎの音が24時間変ることなく聞こえます。海辺の渚ではどんなに風のない日でも波が立たないということはありません。ある一定の周期を持つ波が止む事無く押し寄せてきます。この二つの環境は将に静と動の対比であり、根本的な差異があります。この事は音楽の形成に決定的な影響を与えます。音楽の都は世界中を見渡しても、殆ど全て海からは遠い山の中の都に限られています。オペラの誕生したフィレンチェ、音楽の都ウィーン、モーツァルトの生まれたザルツブルク、モーツァルトと縁の深いミュンヘン、イタリアオペラの中心地ミラノ、花の都パリと挙げれば切りがありません。それではわが京都はどうか? クラシック音楽は生まれなかったが、日本の音楽の殆ど全ての様式は1200年の間に京都で生まれました。これらの事は、静の河と動の海との環境の差異に起因する何かがあると考えます。何故に海に面した町では音楽芸術は生まれないのか? クラシック音楽の殆ど全てが静かな山間の都にしか生まれなかったのは何故か? 新しい時代のオペラを作曲しようとする我々には大きなヒントを与える問題と思われます。 さて水を音楽で表現した作曲家は沢山おられますね。「海」「水の反映」「雨の庭」のドビッシー、「雨だれ」のショパン、「水上の音楽」のヘンデル、「水の戯れ」のラヴェル、「春の海」「水の変態」の宮城道雄などが有名ですが、他にも数多おられると思います。あらゆる状態の水の音を音楽で表現する事は、夢のある楽しいお仕事と思います。気体の相の水の音および固体の相の水の音は音楽にする例が少ないので、液体の相の水の音が主要な問題となるでしょうか? では、河の水が流れる音をどう表現しましょうか? 始めは小さい小川でも下って行くと大河になります。その大河の悠然と流れる様はどう表現出来るでしょうか? 高山の中を流れる時はしばしば滝となって垂直に流れ落ちます。滝の音をどう表現したら良いでしょうか? 川面には小さい波も立ちます。その音はどう表現しましょうか? 雨の音も水のなせる音でありますから、五月雨から豪雨まで雨の音楽も必要です。海に出れば波の音楽、押し寄せる大潮、急速に引いて行く引き潮の音楽、台風と共に来る大波、地震による恐ろしい津波の音楽、海鳴りという海流の音が実際に聞こえますが、海鳴りはどの様に表現したら良いでしょうか? 雲は音は出しませんが、雲を表現する音楽はあるでしょうか? 氷の音楽は可能か? 水蒸気の音楽はどう表現するのか? 水の音楽にも興味が尽きませんね! 先生の水の音楽への抱負をお聞かせ下さい。 |
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1 APR 2002 |
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