黒鍵五音音階

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Ky-081

Black Key Scale Pentatonica

村山先生、今日は!昨日久し振りに江戸時代にわが先祖が暮していた愛媛県小松町という処へお墓参りに行って来ました。一万石の小藩ながら256年も続き藩政の記録も全て保存されている珍しい存在として注目を得て、最近「小松藩会所日記」という本が出版されました。その中にもわが先祖である藩医が何度も登場しています。文化8年頃には京都の医学校へ入学したことを示す古文書も京都で発見されました。さて前置きは其れぐらいにして、今日のテーマは黒鍵五音音階であります。ピアノの88個の鍵盤を見て、黒鍵其れ自体が五音音階を為している事に気付いたのは1980年頃と記憶しています。白鍵の補助的存在として黒鍵があるというのが通常の見方でありますが、白黒を逆転させると面白い結果が出るのですね。学生時代から日本語オペラの制作を夢見てきた長い音楽遍歴の中で、日本語の歌詞と音楽の乖離に疑問を持ち続けていたのですが、卒業して社会人となった頃に日本語には五音音階がぴったりする事に確信を持つに到りました。それから日本の伝統的な五音音階を研究する内に現代世界の音楽との距離が余りに遠いことも実感しました。世界に通用する新しい五音音階は何かと研究する過程の中で偶然にも黒鍵五音音階に到達出来たのです。ピアノさえあれば何処でも黒鍵五音音階で演奏できますし、何の説明も要りません。それは何でも無い日常茶飯事の中に有ったのですが、その事に気付くのに実に20年の歳月を要しました。その五年後に実験作品である「古都憂色」と「天鳥水舞」の作曲へと到りました。その後は職業の多忙のために中断を余儀なくされて、2001年の「送文乃之歌」と2002年の「ヒロリーナ組曲101」に辿りつくのに更に20年も掛ってしまいました。この40年はまた、モーツァルトに到達するための40年でもありました。
黒鍵五音音階で作曲した例は音楽の歴史でも余り記録が見つかりませんが、ショパンの様に右手だけを黒鍵で弾いた作曲家は居ました(Etude Op.10−5 変ト長調)。黒鍵だけで作曲した例は恐らくは少ないのではないかと思います。黒鍵はDb(Dflat)、Eb(Eflat)、Gb(Gflat)、Ab(Aflat)、Bb(Bflat)の五音からなりますが、調性で言えば黒鍵音階は変ニ長調または変ロ短調ということになります。その調性の内五音だけを使用するので、正確には変ニ長調五音音階または変ロ短調五音音階と呼ぶべきものであります。欧文では
Dflat Major Pentatonica または Bflat Minor Pentatonica と呼ぶべきであります。変ニ長調五音音階はやや明るくて気高さと荘厳さを感じさせる調性であると思いますので私の最も好んで用いる音階であります。変ロ短調五音音階はやや沈みがちであるが雅やかさと哀愁を感じさせる調性であると思いますので、これまた私のお気に入りの音階であります。五音音階は音が五つしかないので和声は七音音階に比べて極めて単純であります。Dbの上に重ねる和声はDbGb、DbAb、DbBbの三つしかありません。Ebの上に重ねる和声はEbAbとEbBbの二つしかありません。其れゆえにDbGb、DbAb、DbBbは長調的な和声であり、EbAbとEbBbは短調的な和声であります。音が五つしかない時は作曲は単純化されますが、単調過ぎる傾向もありますので、幾らか修飾音も織り交ぜる必要があります。また、緩急、高低、強弱の変化を持たせて自由度を高める必要もあります。投球に喩えれば、ストライクゾーンを一杯に使った投球法を編み出すことに通じています。球はあまり速くないのに緩急、高低、強弱の投球術を駆使して打者を寄せ付けないベテラン投手は居るものですね。テンポの変化、高低の変化、強弱の変化の全てを駆使する作曲法であります。しかし、変ニ長調と変ロ短調だけではABA形式においても転調が出来ません。そこで転調する時は、他の調性に移行せざるを得ません。その時は他の任意の調性の五音音階へ転調して、再び元の変ニ長調または変ロ短調に復帰致します。和声の表現も分散和音 Broken Chord の他に、時差和音 Time Differential Chord という僅かに時差をつけて和声を表現する方法なども実験的に採用しています。因みに伝統的な協奏曲などの三楽章形式ではテンポは急緩急と展開しますが、私の場合は日本的に緩急緩と展開することにしています。
日本の伝統的五音音階とこの変ニ長調(変ロ短調)五音音階とを比較して聴いて見ると、変ニ長調(変ロ短調)五音音階の方が西欧的七音音階に近い感覚を見出します。また、日本の伝統的五音音階への移行も容易に可能でありますから、この黒鍵五音音階は
西欧音階と日本音階を結びつける役割を果たす事が出来うるものと考えています。これからも色々と実験を積み重ねて、黒鍵五音音階の完成を目指したいと思います。モーツァルトの作曲した626の全曲では最後のKV626「レクイエム」はニ短調であり、交響曲第35番KV385「ハフナー」と交響曲第38番KV504「プラハ」は共にニ長調であリ、KV570「ピアノソナタ第16番」とKV456「ピアノ協奏曲第18番」は共に変ロ長調でありますが、第一楽章が変ニ長調亦は変ロ短調の曲は作曲されていません。其れゆえに黒鍵五音音階は本質的に東洋的音階である言うことも出来ます。ショパンは「24の前奏曲」(Op.28)の第15曲に「雨だれの前奏曲」という変ニ長調の曲を残しているのは流石と思います。またチャイコススキーは「ピアノ協奏曲第一番」(1875)を変ロ短調で書いています。私のライフワークであるオペラ「わがニ都物語」は、この黒鍵五音音階で作曲して見たいと考えています。単純で美しい旋律を 黒鍵五音音階Dflat Major(Bflat Minor) Pentatonica で作曲出来れば私の長年の念願が叶えられる事になります。思えば長い道程ですが村山先生との邂逅により呼び覚まされたわが魂に、今暫くの輝きを与え賜えとミューズの女神に祈るばかりであります。

昔より五つの音はドレミソラ、古今東西歌い継がれし!

Do le mi sol la the 5 sounds are common in human's history of music !

English

21 MAR 2002

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Litto Ohmiya "Hirollina Suite 101" 2002

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