21世紀を迎える

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Ky-029

Welcome the 21st Century

村山さん、こんにちは。いよいよ21世紀を迎えますね。今日までの人生の前半を振り返られて、如何な感慨をお持ちでしょうか。百曲を越える作品を作られて、まもなく21世紀を迎えると同時に村山さんの後半生が始まると思います。これまでのほとんど全作品を拝聴できましたことは、私にとっても至福の至りであり、私の音楽人生に大きな影響を与えて下さいました。21世紀の前半は村山さんの世紀ですから、更なる飛躍の時代となりますようにお祈り致しています。ベートーベンは交響曲を九曲作りましたが、最晩年の「第九」が最後でした。「九」という数字は西欧では、「最後」という意味があるそうで、ロシアの絵画にも、「第九の怒涛」という名画がありますね。ですから、作曲家の遺す、「第九交響曲」はその作曲家の音楽人生の総決算でなければなりません。近年、年末になると日本ではベートーベンの「第九」を聴くのが恒例となり、逆に西欧でも年末の「第九」コンサートの機会が増加したと聞いています。この「第九」をじっくり聴いていると、ベートーベンの一生が綴られている様に聞えて来ますね。正に壮大な「人生の総決算」というべき作品ですが、若い頃に作曲した主題が走馬灯の様に挿入されています。そして、フィナーレに近い「合唱」はこの交響曲を締めくくるのに最高の演出であると思います。シラーの歌詞がまた良いですね。ベートーベンも自分では作詞しませんでした。作曲と作詞の分業の原則を守った伝統的な作曲家でした。詩人と作曲家の二つの魂が共鳴する処にしか、名作は生まれないのでしょう。今年もそろそろ、心静かに「第九」を聴いてみたいと思います。こちらのデータはカラヤン指揮のベルリン交響楽団の1983年の録音がありました。
このお手紙を書いている現在は、リスト(1811−1886)の「
二年目のイタリア」というピアノ曲集を聴きながらキーボードを打っています。私は学生時代の後半から、すごくリストに傾倒して来ました。もちろんショパンも素晴らしいのですが、ワイマールに居て、ゲーテを崇拝し、また、ゲーテが愛読したダンテの「神曲」も読んだリストの作品は私の音楽的感覚を研ぎ澄ますためには最適のものと感じています。今、聴いているのはAlfred Brendelが弾いていますが、この方のすこし硬いけれども正確な奏法はこの作品の基本的な性格を忠実に表現していると思います。こうしてリストはゲーテの「ファウスト」に題材を求めた「ファウスト交響曲」と、「ダンテの作品に寄す」という作品を遺しています。最晩年には、「ダンテ交響曲」を書こうとして遂に未完に終わりました。もうひとつ、私が愛聴して止まないリストの「小品集」があります。この作品は、後世において発見された作曲のスケッチですが、最晩年のリストの音楽的感覚を良く知ることが出来ます。現代ハンガリーのピアニストである、Istvan Lantosが自然体で演奏しているので、本当に心休まる作品です。この曲も既に何百回と聴きました。当然と云えば当然ですか、CDは何百回聴いても壊れないのは本当に驚きですね。また、ショパンについて昔はあまり好きになれませんでしたが、若き頃のホロヴィッツが弾いたショパンの作品は最近になってとても好きになりました。でも、ホロヴィッツの悪い癖というか、どの曲でも最後にFortissimoの和音で終わるのは好きではありません。でも、確かに二十世紀最大のピアノ演奏者であることには異論はありません。ショパンはリストに比して、とにかくTempo Rubatoを多用したことに最大の評価を置きたいと思います。大自然のテンポも変幻自在で一定の速度はあり得ないからです。
さあ、村山さんいよいよ
21世紀です! どんな時代になるか凡人には予想も出来ませんが、村山さんが歴史的な作品を残されるとすれば、この21世紀の前半でしかない訳ですから60歳になられるまでの約20年の間に音楽活動の頂点を必ず迎えられると思います。私は20年先を急いでいるので、村山さんの音楽活動の頂点と後世に位置付けられる作品を拝聴出来ないかも知れません。でも、それを希望し期待しつつ来年からもう既に晩年の最後の直線コースに向います。今、丁度第四コーナーを廻っているところです。しかし、最後のコースを迎えるにしても、今年の後半は風邪が一月半も治らなかったりして、スランプと云うか、体調も感性も良くありませんでした。そのために、運動選手が不調の時は走り込むしかない様に、学生時代の原点に返って、かって聴いた名曲の名演奏を繰り返し繰り返し聴いています。そして、静かに感性を養い、再び詩心と楽想が甦るのを辛抱強く待っている毎日です。聴く曲の中に、今は村山作品の全てが入っていることも云うまでもありません。21世紀を迎えるに当たって村山さんに心から感謝申し上げると共に、21世紀での村山さんの更なる飛躍を祈念致したいと存じます。時は止まりません。過ぎ去り短いが故に時が貴重であると実感している今日この頃です。(3 Dec 2000)

人知れず近くて遠き君故に、女神の愛を待ちつつ祈る!   

Being unknown to pray for You near and far waiting for the Goddess Love !

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