ジョルダーノ:「アンドレア・シェニエ」

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Ky-028

U.Giordano : Andrea Shenier

イタリアのオペラは、将にオペラの本家本元でありますが、1598年に実験的オペラである、「ダフネ」という作品がフィレンツェのカメラータ達によって初めて作曲されたが原作は現存していないとも聞いています。彼等はギリシャ悲劇の原点に帰って、劇と音楽の再構築を意図して今日のオペラの原型を創り出した偉大な先駆者達でした。それ以来丁度400年を経過しました。日本の明治時代にあたる19世紀後半にも、イタリアオペラの再興期があり、プッチーニ、マスカーニとジョルダーノが活躍しました。そのジョルダーノの最高傑作がフランス革命の歴史的な詩人を主人公とする、「アンドレア・シェニエ」です。台本はルイージ・イルリカが、「ボエーム」と並行して書き上げたと云います。
この「アンドレア・シェニエ」は、ヴェルディの時代とは違った形式になっています。前奏曲も間奏曲もなく、構成は大変簡素になっています。幕があくと、直ぐにドラマが始まります。ヴェルディが活躍したオペラ全盛時代のオペラを聴きなれていると、いささかの違和感を感じる程に簡潔な構成になっています。アンドレア・シェニエは歴史上の実在の詩人ですが、この作品ではイルリカの創作が大半を占めていますが、フランス革命の当時の実況中継の様な、躍動感と緊張感が伝わって来ます。作曲も簡潔な構成で、それまでのオペラの様に、形式的な繰り返しがほとんどありません。ABA形式や繰り返しの合唱もないのは、如何にも近代的な感覚をアピールしています。重厚長大な伝統的な構成から、近代の
機動性のある展開になりました。モーツァルトの時代のあの基本形式はもう採用されていません。初めは、簡素過ぎて何か物足りない様に感じられましたが、聴きなれてくると古い時代の形式主義よりは新鮮で躍動感を覚えます。祝典樂的なオペラから、芸術的なオペラへと変貌を遂げたと理解することも出来ます。
さて、主人公のアンドレア・シェニエが初めてフランスの田舎で、コアニー家という貴族邸を訪問するところからドラマは始まります。優雅なメヌエット風の踊りに夢中になっている貴族達にフランス革命の勃発をパリからの使いが一同に告げます。その中に恋人役のマッダレーナ・コアニーという令嬢がいました。シェニエはマッダレーナに愛の尊さを教える、即興詩「ある日青空をながめて」を高らかに歌い上げます。その後に、コアニー家の従僕であるジェラールが農民の一団を率いて宴会場に突入して来ます。ここでシェニエは恋敵のジェラールに出会いますが、二人は革命の闘士としてお互いを認め合う関係に後でなりますが、ジェラールは幼馴染のマッダレーナ欲しさに、シェニエを告発する文書を書いてしまいます。しかし、マッダレーナのシェニエへの思いが余りに強いのを知り、逆に彼女を助ける役割に変りますが、既に告発状を受け取った、革命法廷は遂にシェニエに断頭台行きを判決します。かのロベスピエールが断頭台で処刑される僅か二日前の出来事であったのです。死によってしか結ばれないと悟ったシェニエとマッダレーナは、ある日の夜明けのサンラザール監獄を断頭台への馬車に乗せられて出て行くところでフィナーレとなります。フランス革命下の悲劇をリアルな感覚で最も美しく歌い上げた、不朽の名作として余りに有名ですが、上演される回数はそれほど多くはありません。随所にある長く美しい情感を込めて歌い上げるアリアの難しさから来るのかも知れません。
今回私が鑑賞したVTRは、1981年にウィーン国立歌劇場で上演された録画をNHK教育TVが放映したものです。オーケストラはウィーン国立歌劇場管弦楽団、合唱は同合唱団、シェニエ役にプラシド・ドミンゴ、マッダレーナ役にガブリエレ・ヴェナチコーヴァ、ジェラール役にピエロ・カップチルリ、マッダレーナの侍女のベルシ役にロハンギス・ヤシュミ、シェニエの友人のルーシュ役にハンス・ヘルム、ジェラールの密偵役にハインツ・ツェドニク、指揮はネルロ・サンティ、演出はオットー・シェンクでした。伝統あるウィーン国立歌劇場は素晴らしい設備で五階席まで満員の観客の惜しみない拍手がこの公演の水準の高さを証明していました。何回見なおしても感動を禁じえない名作の名演奏です。(20 Nov 2000)

この愛は迷いなき道とこしへに、君がみなとへいのち果つ間に!

This way is so far without hesitation travelling for Your Port my Goal !

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文献:「歌劇大事典」 音楽之友社 1962

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NHK 教育TV 放送録画 1981

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