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E.Kalman : Die Csardas fuerstin |
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オペレッタはミュージカルの母体となるオペラ形式ですが、カールマン(1882−1953)が作曲した喜歌劇「チャルダーシュの女王」はドイツ語文化圏では、最もよく上演されるオペレッタのひとつですが、日本ではあまり馴染みのない作品ですね。しかし、このオペレッタはオペレッタの現代の代表作品のひとつであり、オペレッタの魅力を余すところ無く伝えてくれる最高傑作の範疇にはいります。ウィーン・フォルクス・オーパーの第三回日本公演で上演されたこの作品は、日本人に初めてオペレッタの魅力を伝えた記念すべき作品でもあります。 チャルダーシュというのは、ハンガリーの民族舞踊で、初めはゆっくり踊り、段々と速くなり、最後は眼にも止まらぬ速さで終わる情熱的な踊りです。「序破急」の三つのテンポをもつのはアジア大陸全体の共通の舞踊形式でもあります。この作品では初めから終わりまで、歌あり、踊りありで名曲のオンパレードで綴られています。将に「歌舞樂曲」の全てを生き生きと表現する、本来のオペラの基本形式を満たしています。オペレッタからまもなくミュージカルへと変化して行ったことが良く分かります。三時間近い上演時間が短いと感じる程に、とても楽しい作品です。私が保存しているのは、1985年の第三回ウィーン・フォルクス・オーパーの日本公演の中継録画をNHK教育TVが放映したもののベータ版VTR記録です。このほどDVDに収めた作品のひとつで、私の最も気に入っているオペラ形式の代表的作品でもあります。それは、歌と踊りと合唱と台詞もみんなあるからです。オペラの様な肩の凝る構えもなく、とにかく楽しい、自然と観ている方も踊り出す様な、客席と舞台が一つになって拍手万来で鳴り止まないという最高の盛り上がりを見せました。ドイツ語圏での上演の歴史は長く、ハンガリーの香りのするこの作品はオペレッタファンには、こたえられない作品ですから、是非ご覧頂きたいと思います。 この日の出演は、主人公シルヴァ・ヴァレスク役にミレナ・ルディフェリア、その恋人役のエドウィンにフランツ・ウェヒター、影の主役のフェリ・パーチ役にベテランのシャンドル・ネメット(ハンガリーの貴族役)、エドウィンの親友役のボーニには、アメリカ出身のジャック・ポッペル、エドウィンの言い名づけ役のアナスタージアには、エリザベート・カーレス、エドウィンの父親のレオポルド・マリア侯爵に、ルドルフ・ヴァッサーロフ、母親役の侯爵夫人にソニア・モットル・プレーガーなどが出演しました。 前奏曲もヒット曲で、演奏される曲目の全てが有名なヒットパレードなので、観客と舞台の一体感はものすごいものがあります。このような楽しいオペラがあることを世界中にもっと知らせてほしいと思います。また、ドイツ語と音楽が完全に一致しており、ドイツ語のイントネーションに完全に適合した作曲がなされています。言語と音楽の一致は、オペラの基本的条件の第一でもあります。現代日本のオペラは、日本語と音楽が全く合致していない違和感を免れないのは、作詞も作曲もまだ制作の実験的努力が足りないことから来ていると学生時代から痛感しています。 このオペレッタでは、ドイツ語の歌詞と作曲が完全に一致して、ドイツ語で高らかに歌い上げることが出来ます。イタリア語とも、英語とも異なり、ドイツ語そのものの音楽的特性を100%引き出した作曲法が完成している。ここまでに至るには、前回のモーツァルトのオペラへの偉大な取り組みが与える歴史的影響は計り知れないと感じます。私は日本語の歌詞に完全に合致した日本的な音楽作品の登場を待ち望んで来ました。21世紀の初頭には、私達のこの夢が叶うのでしょうか。 この「チャルダーシュの女王」では、歌詞と音楽のほかにもチャルダーシュという民族舞踊の素晴らしさがあります。歌と音楽と踊りが三位一体となって、オペレッタを最も楽しい形式に高めています。私の理想とするオペラ形式がここにもあるのです。 音楽の形式は、ABA形式もあれば、単純に同じ曲を二回以上繰り返す時もあります。これは踊りに合わせた作曲がなされているからではないかと思います。全編がチャルダーシュという踊りのための音楽で構成されているので、リズムとテンポはその踊りのリズムとテンポになっています。これがまた、血湧き肉踊る人類の舞踊本能を呼び覚まします。21世紀の新しいオペラは、この作品の様にオペラの三大要素、歌と踊りと音楽が舞台一杯に展開する作品が必要ではないかと長らく考えて来ました。演ずるものと観るものが一体となることが、古来からの音楽ではなかったかと思います。即ち、演じるものと観るものとの熱き心のコミニケーションが成り立つことが必要であると思います。今回は「チャルダーシュの女王」というオペレッタを観ての感想を申し述べました。(15 Nov 2000) |
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