作品2:トッカータ「イリテート」

第一幕第一場

Ky-013

Op.2 : Toccata "Irritate"

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作品2「Toccata Iritate」は作曲者御自身が17ー18歳の時の作品で高校生の若い年代なのに、既に人生の始まりと終末への想いが表現されています。単純で明快なテーマが提示され、展開部でもあまり変化せずに延々と繰り返されます。「人生の疑問に関する堂々巡り」と自評されておられるように、若き日の青年の悩みを華麗に素直に表現したものと解釈されます。この命題は人生の始めに発せられるテーマですが、人生の終わりにまた発せられる同一のテーマでもありましょう。作曲者が最晩年にもう一度書く必要の出てくるテーマでありますね。ベートーベンの第九にも出てくる、あの「Pastral」のテーマの様に!
この問いに対する、作者御自身の回答には、私は質問致しません。それはお尋ねして聞くべきものではなく、この曲を300回以上聴くことによって聞き手が感じる必要があることだからです。
Opera Lyrica ”Horistic”では、第一幕第一場で、主人公が単純な歌詞を曲と同じく繰り返し繰り返し一人で歌い上げます。開幕の最初の場面にふさわしい出だしになります。聴衆は退屈に感じるかも知れないので、ベルカント奏法で十分に変化をつけて、繰り返し歌い上げたいとろです。13分25秒はオペラでは長いかも知れないので、10分ぐらいに短縮する必要があるかも知れません。

作品4:「グリーティング・プレリュード」

第一幕第二場

Op.4 : Greeting Prelude

作曲者の同じく高校時代の作品であり、「音楽仲間におくるPrelude」であるとのことでありますが、明るく楽しくすくすくと成長する吟遊詩人である主人公のOperaでの自己紹介の場面でもあります。公害もまだ少なく、地球がまだ緑に覆われていた時代の「古き良き時代」に育った主人公の思い出を歌い上げる第一幕第二場であります。演奏時間の7分4秒は舞台上でも丁度よい時間であると思います。
この作品でも、作品2より引き続いて、単純で明快なテーマが余り変化せずに繰り返されます。日本国でいえば、1960年代から始まる高度成長の頃に相当致します。人々は未来に対して希望を抱き、働けば働くほど生活水準が向上する時代でしたね。青く澄んだ空を背景に、主人公が一人で歌い上げる、「我が青春の歌」でもありますね。

作品11: 「幻想的交響曲」第一楽章

第一幕第三場

Op.11: Symphonic Fantasy 1st Movement

作品11の「幻想的交響曲」は主人公が初めて遭遇する疾風怒濤の青年時代の嵐の体験を歌い上げる場面です。時代的には、高度経済成長の影の部分の公害問題が顕在化し始めた頃に相当します。常に未来を感じ歌い上げる天分をもつ吟遊詩人の主人公トロイは、この第一幕第三場でも、ただ一人で歌い上げます。地球環境の破壊を嘆くと共に、初恋の人との別れがたき惜別の情を込めて、重くも熱く歌い上げる「失恋の幻想曲」でもあります。主人公の永遠の恋人は誰か? それはこの場面では分かりませんが、地球を救い、住処を追われた放浪の旅に出された民に、生きる力を与える「Museの女神」か? 第一幕のフィナーレで、「この国を救うのは歌である」と主人公に歌わせるあの「Museの女神」なのですね。演奏時間の5分は丁度よい時間となっています。主人公の名のTrau(トロイ)は「まこと、信」の意味で村山さんのお名前「誠」から取っています。また、Villeberg(ヴィルベルク)はもちろん村山の文字どおりの欧語への訳語です。
幕が開いてから、この場でも主人公一人で歌い上げます。それはやがて登場する、最愛の人「Frau」の登場への長い長い序奏でもあります。切なくも悲しく美しく歌い上げる旋律は、聴衆に初めて、Opera Lyricaの本領の一端を見せる場面でもあります。

作品11:「幻想的交響曲」第二、三楽章

第一幕第四場

Op.11: Symphonic Fantasy 2nd & 3rd Movement

いよいよ第一幕のフィナーレになります。千年間も繁栄したこの都がまさかの滅亡の時を迎えました。この誇り高き都は外敵によって滅ぼされたのではありません。高度成長のみに専念した愚かな国民(くにたみ)自身によって廃虚と化したのです。神も恐れず、満ち足りる心も失った愚かな人類によって、地球全体も滅亡の危機にさらされてしまいました。主人公が生まれ育った都が今は廃虚となり、この国の王子でもある主人公はこの都を追われて、北の都へと追放されるところで第一幕がフィナーレを迎えます。愛する人と都を失い、追われて北に離れる、惜別の情は如何ばかりか? 第一幕第四場はこのOpera Lyricaの前半のフィナーレを飾ります。
「別れは死である」とはゲーテの有名な恋愛詩集から引用しました。また、「この世での死は、あの世での生」、「この世の悲しみはあの世での喜び」、「この世での敗北はあの世での勝利」と切々と情感を込めて歌い上げるのは、未完成の私の詩劇「わが二都物語」から一部を引用しました。演奏時間の5分13秒は、やや短いが故に、否が応でも第一幕のフィナーレを情感を込めて、主人公一人で歌い上げます。ここで初めてコーラスのレフレインを二回だけ付けます。それは第二幕以降に登場するヒロインの登場を暗示させる準備でもあります。実際のオペラ演奏が実現すれば聴衆は幕が降りても、その場を離れられない程に情感の高ぶりが演出されるでしょう! 長い第一幕を男声のテノール一人だけでその情感を歌い上げることが出来れば、オペラは大成功と言えるでしょう。

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