この 樹 にそえて ・・・ no.6
祟る・・・ 温泉郡川内町の揚神社に謂われを持つ一本の大楠がある。
「昔このクスノキを伐ろうとした者がおったが、鋸でひとひきしたところ
真っ赤な血が流れ出し、驚いて逃げ帰ったまま、十日ばかり寝込んでしまった。
何年か後、話を聞いた他の男が 「そんなことがあるものか。よし、わしが伐ってやる」
と、大きな斧を勢いよく打ち込んだところ、急に腹痛を起こし、そのまま死んでしまった」
というような、祟る樹の伝承は少なくない。
祟りは古来から日本人の道徳観念の一つで、これによって歴史が左右されてきた
というような話も聞いたことがある。
他の宗教が尊む秩序、倫理といったようなものを、こういった形で庶民にも直に
解らせ定着させてしまったのだろう。
ただ、科学や情報の発達とともに、見えなくても良いものまで見え始めるようになると
その意外にも絶大だった効力が、ここにきてやや衰えてきているようだ。
揚神社の楠 目通り7.9m/樹高36m/愛媛県川内町北方・揚神社