この にそえて ・・・ no.44


        

 お祭り・・・ 春祭り、夏祭り、秋祭り・・・ 日本人は祭りが大好きだ。

   冬祭りはあまり聞かないが、お正月は年内最大の祭り行事とも思える。 春祭り、秋祭りは稲作の豊穣を祈願

   感謝する祭りで、11月下の卯の日に行う新嘗祭等はそれを良く現している。 この時には天皇自らも新穀を食

   せられるが、これを直会というそうだ。 直会は民間にもあり、神様と同じ物を食べてその霊力を分けてもらおう

   という事らしい。

   夏には盆踊りがある。櫓を組んでその周りを丸く囲み、輪になって踊る。 学校の運動場にライトを焚いて、にぎ

   やかな音頭がスピーカーから割れながら響いている。 子供は普段着ない着物を着てはしゃぎ、若者は何故か

   妙に浮き足立って目が泳いでいる。 これも元は祖霊を歓待し、共に楽しく踊って又気持ちよく返ってもらうという

   神聖な儀式だった。

   祭りにつきものなのが酒で、これも御神酒というお供え物だったようだが、やはり直会ということで飲んでしまう。

   最初は神妙に頂き、次に感謝して頂く。そして笑いながら頂きはじめると祭りは祭儀から祝祭に変わっていく。 

   この落差がまた日本人的で面白い。

   祝祭の起源は、天の岩戸開けの時に行った神々のどんちゃん騒ぎではないかとも思う。 日常を離れて歓喜し、

   踊り、食い、飲み、乱れる。 これも、日頃の苦労や不満を程良くガス抜きする事のできるうまい方法だったのか

   もしれない。 祭りは無礼講だから、終われば又もとの日常にすぐ戻る事ができる。

   子供の頃は、祭りが終わる時に何とも言えない寂しさのようなものがこみ上げてきた。 周りの人々が醸し出す、

   いつにない楽しい表情や賑やかな空気が、徐々に又消えていく・・・

   祭りの雰囲気と、その中にある特別の物が返っていく心細さを不意に感じていたのだろうか?

      


蕪崎神社の楠 目通り7.8m/樹高25m/枝張り25m/愛媛県土居町蕪崎・蕪崎神社

《 海沿いの広い田園を前にした神社に立ち、張りのある幹と健康な繁茂は楠の模範とも思える良い樹形。幟が立って祭りが始まる。》