この 樹 にそえて ・・・ no.38
大平の椋・・・ 「砥部の十六谷の水流れ出て 水無月の頃も涸れる事無し 尤もなり」 (愛媛面影)にうた
われた重信川の、その源流にあたる砥部川が砥部の山中より下っている。 慶長年間に大洲藩の奨励で発達
したという砥部焼きは、今もこの地の窯で代々受け継がれ町並みにもその風情がそこここに感じられる。 椋の
ある大平は、旧土佐街道の国道33号線を高知へ向かう峠道から、少し下った山中にあり傾斜面に畑と民家が
寄り添うように点在した、長閑で慎ましやかな良い所だった。道に挟まれた斜面の中程に椋はあり、四国でも
有数の目通りを示す椋の巨木だが、先ず見た印象では「少し細いなあ」と感じた。 真っ直ぐに伸びた背の高
い樹であるところに、下枝を極端に刈り込んでいる。樹皮は張りがあって、皺のいった根元あたりも重厚だが、
内部はかなり浸食されているようだ。 ただ居場所が特にいい。 このまま穏やかに暮らせば、また更に大きく
成長して、永く繁栄するのではないかと思われた。椋の実は紫黒色に熟すと、ムクドリがこれを好んで食べる。
だから椋鳥と言うのだそうだ。 二羽の鳶が、ゆっくりと木の上を舞っていた。
大平の椋 目通り8m/樹高35m/愛媛県砥部町大平