この にそえて ・・・ no.31


     

 塔・・・ 五重塔は塔婆なんですよ、と宮大工の西岡常一さんは言っている。お釈迦様の遺骨を埋めてその

  上に塔婆として太い心柱を建てる。 これを風雨から守るために何層もの屋根を付けたのだという事でその柱は

  屋根の上から突き出て、そこに最上部の重しとして銅のキャップを被せたものが相輪なのだそうだ。 重要なの

  は中の柱だと言うことになる。

  五重塔は京都の東寺にあるものが56mと、現在の木造建築としては一番高い。ただ室町幕府三代将軍の足

  利義満が建てたという相国寺の七重塔は360尺(109m)もあったというのだから驚かされる。 今から600年

  も前の話である。義満公はこれを御所の隣に建て、天皇を見下ろして悦に入っていたのではないかと、伊沢元

  彦さんは著書「天皇になろうとした将軍」で言っている。 塔の姿は均整がとれて実に美しい。 建築美の最高峰

  とも思える。山形県の羽黒山にある羽黒山五重塔は杉の巨樹に取り囲まれた中に忽然とありその姿は正に杉

  そのもののようだ。樹の高さと重厚さになんとか近づこうとして、塔婆は次第にあの形になっていったのだろうか。

  四国では、讃岐の善通寺にある五重塔(45.5m)が一番大きく有名だが豊中町本山寺の五重塔(35m)も、

  元は弘法大師が自ら祖谷で材を伐採して建造したとも伝えられる大変立派なもの。現在の塔は大正二年に再

  建されたそうだ。 そのすぐ横にある高良神社の楠は、幹に窓木を呈した個性のある樹影で塔よりは少し低いが

  堂々と葉を茂らせて境内の中程に立っている。これを自力でコツコツと造り上げていったのだから、やはりこちら

  も素晴らしい。


高良神社の楠 目通り8.75m/樹高31m/枝張り29m/香川県豊中町本山・高良神社

《 二本の幹が癒着した合体木とも思われる。境内には他に目通り3.2mの綺麗なムクノキがある。 》