この にそえて ・・・ no.30


   

 

 種・・・ タネは命のタイムカプセルのようだ。事実、遺跡のような所から見つかった大昔のタネが研究室で発

   芽したというようなニュースを見てびっくり仰天したおぼえがある。 発芽に適した環境になるまで、仮死状態で

   眠っていたのだろうか。それにしても信じられないような話だ。命とは一体何なんだと、あらためて考えてしまう。

   他にも舌を巻くようなタネの巧妙な技がある。 ダイズやホウセンカは広範囲に分布するためにバネじかけのよ

   うにタネをはじき飛ばして散布する。 またイチイやニシキギはタネの一部を染色して目立たせ、鳥などに食べ

   られて分布を謀るという。 昆虫と同じ様な羽をもって空を飛ぶカエデ、カラマツのタネ。 粘液やカギで動物や

   人の衣服に付着するオナモミやノブキも憎らしい奴だが頑張っている。

   もともと台湾や東南アジアの熱帯地方にしかなかったアコウは、その小さなタネを海に流してはるばる黒潮に

   乗って日本にまでやってきたそうだ。 戦国時代に自教の教えを広めるためにやってきた異国の宣教師を連想

   してしまう。 そこまでして何の得があるのだろう?などと考えるよりも、実際にやってきてその種族を見事に繁

   栄させてしまった事に、凄まじいタフネスを感じてしまった。


平山のアコウ 目通り9m/樹高12m/枝張り16m/愛媛県御荘町平山・天神社

《 鳥居のすぐ横にある。境内の裏側にも目通り6.75mのアコウがあるが、雑木が鬱蒼として確認し辛い。》