この 樹 にそえて ・・・ no.264
八坂神社のソテツ・・・ 昔読んだ南条範夫著「古城物語」という小説の中に「鹿児島城の蘇鉄」という短編があった。内容は殆
ど忘れてしまったが、読みながら脳裏に黒々とした小山のような蘇鉄の異様がはっきりと浮かび、一度そんなものを見てみたいものだ
と思った。それから数年、十数年。度々名のついた大蘇鉄を目にしたが、これははたして巨木と言えるのだろうか?と思いつつ、ついつ
い通り過ぎていた。ソテツ科は古生代末期の二畳紀から栄えたとされる熱帯、亜熱帯の植物で、大昔の姿を残した生きた化石のよう
なものなのか? 雄花は精子を生ずるというところは銀杏とも似ている。種子は赤い栗のようで鮮やかな実が雌株の根元にどっさりと転
がっている様子は少し奇異な光景にも感じた。このソテツは寛永時代に、ある旧家から植林したものだそうで樹齢は約300年と言われ
ている。明確な太い主幹があり、そこから枝分かれした枝が広がって巨大な葉をわき広がらせている。実は食用ともなるそうだが材は
まず役に立たないだろうから用材として伐られることは無かったのだろう。それにしても日本の神社にあって、いまだにやや違和感を感
じてしまうのはなぜだろうか。
八坂神社のソテツ ・・・幹通り周囲 2.46m/樹高4m(資料値)/徳島県、つるぎ町半田、西久保、八坂神社