この にそえて ・・・ no.262                         


            

 陰西のコガノキ・・・ カゴノキは別名コガノキ、カゴガシ。クスノキ科の常緑高木で雌雄異株。この辺りではコガノキと呼ぶようだ。

   幹の直径が1mを超える程の巨木は四国でも珍しく、樹齢300年と言われても全く頷ける。このコガノキは旧半田町役場から南西に

   支流沿いの道をさかのぼり、延々と曲がりくねった坂道を登った先の山上にある。宝永7年(1710)に創建されたという観音堂と同じ

   頃に発生したと言うことで、「観音堂の木」として大切に保護されてきたそうだ。幹内部は大きく侵食されてガランと大洞を露にしている。

   繁茂も扁平で一部枯れ枝もあるが、老木としてはこれがごく一般的な樹様で割りに健康な部類かもしれない。一方に固まった枝は

   幾重にも折り重なって葉陰は今も濃い。堂脇の道は吉野川の小野浜から祖谷、落合に続く江戸期からの街道であったそうで、その

   当時から旅人はコガノキと観音堂の間を行き来していたのだろう。見下ろせば蛇行した川に沿って濃い緑の山が連なっている。暫く

   すると小さなトラックがご陽気な演歌を響かせながら坂道を登ってきた。あれは前に旅番組で見た移動販売の車だろう。民家の庭先

   に止まると家人が各々財布を抱いて現れ、陽だまりの山上はやおら長閑で賑やかな小店となった。


   陰西のコガノキ ・・・幹周り3.6m/樹高10m(資料値)/徳島県、つるぎ町半田、陰名、陰観音堂