この にそえて ・・・ no.260                           


          

 下竹三所神社のイチイガシ・・・  旧半田町の町役場を過ぎて南へ、半田川に沿って下竹まで。下竹橋を渡って三所神社を

   目指す。斜面に小ぢんまりとした田畑があり、そこに点在する民家の間から子供らの声が聞こえてくる。民家の上方に混生の森があり、

   背の高い杉が一本見えた。それを目当てにやおら山道を登り始めようとすると、庭の奥から大きな白い犬がヒョッコリと現れた。この辺

   りの犬も放し飼いのようだ。のんびりと構えてこちらを窺っている。斜面には小さな茶畑があり、ミツマタのようなものも見える。この長閑

   な谷あいの高みに神域があり、拝殿の前にやはり大きめの杉が一本立っていた。お参りをしてから、辺りを見渡したがイチイガシらしき

   大木は境内に見当たらない。枯れてしまったのかな?と少し心配したが、案内板を見てから更に周辺に目を配ると、カシは社殿の裏の

   藪の中にあった。根元まで行ってみると意外な程の迫力に驚いた。完全な単幹で太さが上部まで保たれている重量級の幹。樹肌はゴツ

   ゴツと波打って、老木然とした雰囲気は正に巨樹老木の風格だ。しかも樹勢良く、高くより枝分かれした付近から沢山の枝葉を茂らせ

   ている。四国でも五指に入る程の立派なイチイガシだろう。露払いのように寄り添うカゴノキがその大きさを更に助長している。近くには

   直径1m級の巨木が数本あり、野生そのもののようなケヤキやヤブツバキの大木が煩雑とした小さな森を形成している。なかでも実の

   ならないという「実ならずの藤」は神木として敬愛されているそうだ。小春日和の昼下がり。先程の犬が気持ちよさそうに一声吼えた。

   声は谷あいの下草にふわりと落ちて広がり半田川まで転がっていくようだった。


    下竹三所神社のイチイガシ ・・・目通り周囲5.5m/樹高30m/徳島県、つるぎ町半田 、下竹、三所神社