この にそえて ・・・ no.246                           


          

 夜討ヶ窪の山樫・・・  東予市の国道196号線高須から大明神川に沿って河之内へ向かう。川沿いには何本かの黒松が点

   々とあり、昨今は殆ど見かけなくなった松並木の面影が微かに残されている。戦前は立派な松並木が方々にあり、それらは過日

   の郷愁を誘う第一の情景であったと当時の人は言う。背の高い松がポツリポツリと立ち並んでいる姿は廃墟に生き残った老兵とい

   う印象でもあった。さて大明神川を更に遡り本谷温泉を過ぎると道端に立て札がある。市の天然記念物であるアラカシは民家の庭

   先を越えた杉林に埋もれるように立っていた。曇天の中、根元は異様に暗い。樹下の祠は案内で昔野党7人を討った折、首と胴を

   分けて葬った首塚であるとのこと。内部がすっかり侵食され虚となった樹相の凄みとも相まって一種独特の雰囲気が漂っている。

   主幹は欠損して樹皮がかろうじて残ったような状態ではあるが資料で見た印象より遥かに立派で、枝葉の付きも良くまだ樹に勢い

   が残っている。幹の内部は猛烈に不定根を発生して何とか根付かせようとしているのだが、そのどれもが地面に届かずに枯渇して

   いるようだ。こういうものを見ると少しは内部に土を入れても良かったのではないかとも思えるが、今となっては別次元の話なのかも

   しれない。周辺の移り変わりは激しく薄々と隔世の感があった。


   夜討ヶ窪の山樫 ・・・目通り周囲6m/樹高16m(資料値)/愛媛県、東予市、河之内、甲 


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