作品No.1 
 詰将棋パラダイス 短編コンクール(7手詰) 昭和58年6月号

 私の初入選作です。最初に詰将棋に興味をもったのは中学生の頃ですから、それから創作・投稿まで
10年は経っているということになります。当時の棋力は5級くらいでしたので創作力が乏しかったと思いま
す。それでも創作ノートには200作くらい手書きで書いてあるのですが、モノになる作品は一つもありませ
ん。(笑・・・まあこんなものでしょう) この作品はその創作ノートには無くて、メモ帖にあった走り書きを後
年見つけて作り直したものです。7手詰だったので短編コンクールにとりあえずは投稿して6月号を待ちま
した。作家の方は誰でもそうだと思いますが初めて作品が活字になる喜びは、言葉には表せないほどの
ものでした。嬉しくて家族のみんなに見せたり友人に言ったりするのですが、周りの反応は実に薄かった。
やはりマイナーなんですよね詰将棋って。
 結果発表の解説は鶴田主幹(たぶん)。作者の言葉で「本年の目標は初入選です」なんてかわいらしい
事を書いてましたネ。それにしても34作中2位とは全く予想していなかった結果で驚きでした。1位は有吉
澄男氏、3位は柳原裕司氏、4位は小林敏樹氏と宿利誠という豪華な顔ぶれでした。今、順位戦で大活
躍の小林氏より上だなんてもう2度とないことないことでしょうね。(感激)
 作品自体は狙いをコンパクトに表現できたという点では満足のいく内容だと思います。解説中にある馬
の位置については最初は15でしたが、何となく紛れが乏しそうに感じたので37までもってきたら余詰ん
でしまい、なら26にということでした。
当時の解説(昭和58年8月号)
作者−言うまでもなく攻方57桂消去がネライ。本当はもっと紛れと変化を難しくしたかったのだが、棋力の
不足ででできなかった。くやしいがこれを作風にしよう。本年の目標は初入選です。
☆初入選が目標とは小さい小さい。それどころか、群作を押さえて堂々「二位」に輝いたのだから、立派な
ものです。さて本作、入玉形だがイヤな形ではない。2枚の馬の位置は26馬は15馬の方が良いと言う意
見を述べた短評もあったが、これはどちらでも良く、作者に任せたらよいと思う。攻方57桂が仲仲うまい配
置で、この消去が作者の狙いというが、59の地点が本局の焦点であり、59馬、59香と二回に亘り太い
クイを打ち込む。玉方で動くのは王様だけであるが、不動駒云々といった感じは全然なく小味ではあるが
キレイな手筋で詰め上がる。作者はこの初入選、然も二位ということを契機として一層の飛躍を遂げてほ
しい。
灰色の脳細胞−58馬がいい感じ、B。
原田清美−これを最後に解いたのでA。
ヒヨコ−57桂が上部脱出を押さえている形だけにジャマ駒とは気付き難い、A。
藤井美大−わりと解きにくい57桂を消すために馬を捨てる、一寸勿体ない気がするが・・・、A。
森田正司−じゃま駒消去の完璧な表現、A。
誤答 無答 A B C 得点
1 4 82 57 4 379
80年代ショート詰将棋ベスト200 (詰将棋作家集団ACT編・将棋天国社) No.66 解説:穂上 武史
世に邪魔駒消去という詰将棋用語がある。読んで字の如く、詰めるための障害となっている攻方の駒を消
すことである。邪魔駒消去を主題とした作品で人をうならせるには次の二点が重要である。
一、邪魔駒がわかりにくいこと。
二、その消し方が巧妙であること。
本作、57桂が邪魔駒である。即ち59香、67玉、56馬までを邪魔しているのだが、一目邪魔に見えない
。そして消し方はと言えば、たかが桂を消すために、馬を豪快に捨ててみせる。森田正司氏をして「邪魔駒
消去の完璧な表現」と言わしめたのも頷けるのである。

RETURN