この にそえて ・・・ no.33


   

 笹越え・・・ 朝日新聞のエッセーで、作家の西村望さんが笹越えの話を載せている。  

  「野を越え山越え山越えて、京へと問えばなお三里。粉屋の女房笑顔よく。」

  高松駅の前で「よその街にコーヒーでも飲みに行こうか・・・」と、フラッと電車に乗りこんだがその時、薄田泣きん

  の詩の一説をふと思い出して、居もしない「粉屋の女房」にひかれてか高知の豊永という所までついついやって

  きた・・・という話。 寒駅の車窓から見える眺めは、山また山だが、その山々をかき分けるようにしてさらなる山

  のあなたに通じる細い道が口を開いている。それを見るなり電車をおり、それからトコトコ歩き始めた。前を馬方

  と馬が行く。その馬の尻について歩くうち、なぜかわからないが馬とはぐれてしまった・・・ それから日も暮れか

  けた峠の細道を上り降り、とうとう日暮れにたどり着いた所が「笹」だった。山でたき火をする人にそう教えられた。

  (文章要約) なんとも夢見心地な文章の魅力にひかれて、自分もその「笹越え」をやってみたくなった。

  大豊町の豊永から、徳島の東祖谷山には国道439号線が続いている。途中に京峠があり、ここに峠の茶屋

  があった。このあたりからリュックを背負って細道に入り、杉林の中を歩いていく。途中でオフロードの オートバイ

  とすれ違った。かなり歩いてヘトヘトになったが、とうとう道がわからずに引き返すはめになってしまった。後日、

  今度は物部村の方から北に上り、一応「笹」にはたどり着いたが「笹越え」は果たせなかった。気のいい粉屋の

  女房には会えなかったが、その代わり山中の立派な杉を見つけた。  


岩本神社の杉 目通り8.3m/樹高45m/枝張り14m/高知県物部村笹・岩本神社

《 笹の民家の途切れた山中にあり、根元には鮮やかな薄苔を纏っている。 》