この にそえて ・・・ no.279                     


 

     

 大西神社の杉・・・ 新宮村に入ると大きな観光案内板があり、大西神社の所在地はよく分かる。

   旧西庄小学校は大西神社の境内と隣接し、校庭とほぼ兼用しているような感じだ。かつて山間の傾斜地を開拓して作られたのだろう。

   貴重なスペースは8月に行われる夏祭りの鉦踊りで大いに活用され、この山中で毎年たくさんの見物客で大いに賑わうという話し。

   鉦踊りは阿波池田の白地から長宗我部に追われ伊予の轟城で最期を遂げた大西備中の守元武の霊を鎮魂する踊りだそうだ。

   残党がこの地まで逃れ隠棲したのか、あるいは世が変わっても君主への思いを持ち続けたか、または覇者側の怨霊への恐れか。

   学校は近年に廃校となり、普段は大変静かな神域となっている。鳥居の両脇に立つ杉が大きく、他にもそれに次ぐほどのものが数本。

   拝殿から見て右側の杉が最大で、まっすぐと伸びた素直な幹は素晴らしい。ただ旧校舎側の枝が一面だけ欠損し樹皮が剥がれている。

   焦げ跡は見当たらないので、落雷等に伴う火災ではないようだ。風害だろうか? しかし、まだまだ老け込む年ではないだろう。

   前々からこの一対の立ち姿には感じ入っていた。

   このようなものがあるおかげで伝統の風習にも厚みが増しているようにも思える。本当にそう思う。徳島の祖谷に行っても、高知の山間に

   行っても、愛媛の南予、香川の山奥に行っても、こういったものがあると本当に感じ入る。人間の浮薄さ、曖昧さ、勝手、怠慢そういったものを

   払拭し支えて立ち上げてくれるような力を持っている。尊い心を信じる標のようだ。校門の前には杉に準えた訓示が石碑に彫られていた。

   「のびよう 大杉のように」


   大西神社の杉 ・・・幹周り 4.77m 3.88m/樹高20〜25m(目測)/愛媛県、四国中央市、新宮、上山、西庄、大西神社