色とはなんだろう  

『光は波動、電磁波である』
    
     
人間の目に見える電磁波は、
「380〜780nm(ナノ・メ−タ−)」を
を光りといい、この波長領域を可視光という。
     
 ここで思い浮かぶのは、まず、空に浮かぶ虹で
あろう。太陽の白い光か水滴というプリズムのよ
うなところを通ると7色の色が出てくる。
 つまり、これを反対に見れば、白い光の中には
色の光があり、これを合わせると、また白い光に
なる。
 これは、プリズムの絵を見れば一目瞭然だ。

プリズム

 初めに、「色という物はない」といったが、この概念は「光」と「人間の関係」において
生まれた。といった色彩学から始めると長くなる。そこで、乱読癖のあるぼくの雑多な資料
から、とにかく、一番短い説明で済むものを紹介しながら僕流の解説をと考えた。    
 まず出足は、非常に簡潔な富士フィルムの1990年度のパンフレット「VALUE」と
ライフ写真講座の合理的明快な解説・写真図を引用しながら僕が補足する。
   
 といって、ぼくは手を抜くわけではない。講座を進行しながらおいおいに勘所は詳しく述
べるが、今のところは概念だけを理解ねがえればと思う。
           
         

光と色の3原色とは

          
 さて、次に「光の3原色」「色の3原色」、「加色混合」「減色混合」という避けて通れ
ない言葉がある。これは義務教育で習ったはずだが、もうかなり昔のことで言葉だけは何か
記憶があっても、中身の方はかなりあいまいというのが普通の人で、特に健忘症ということ
ではない。しかし、せっかく習ったことだから思い出して欲しい。ここでは、絵図をしっか
り見ながら、昔にかえって復習をしよう。 
    

光の3原色

          

色の3原色         

        

「光の3原色」は、青(B)、緑(G)、赤(R)の色光のこと。     
     
○「色の3原色」は、イエロ−(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の色のこと。 
    
             
☆「加色混合」は、いろいろな色彩をつくりだすのに、違った色を組みあわせること。
              
              たとえば、赤い光と緑の光りを混ぜ合わせると黄色になる。
              赤、緑、青の3原色の光を重ねると、目には白く見える。
     
★「減色混合」は、白光からある色をのぞいて、残りの色が表れるようにする方法。
         
              図を見ると3つの円形があるが、これらはイエロ−、マゼン
              タ、シアンのフィルタ−である。            
              白色光源の前にこれらを置くと、フィルタ−が2枚重なった
              ところは、それぞれ赤、緑、青の光りを通す。      
              3枚重なったところは、全波長を遮断し、真黒になる。  
    
              右図のように減色フィルタ−は スペクトルの3分の2を透
              し、のこりをさえぎる。                
              たとえば、シアン・フィルタ−(右上)は、緑と青の波長を
              透すが、赤を遮断してしまう。
    
                       色には固有のイメージがある               特に大切な<12色相環>      

                   
   それぞれ対称位置にあるのを補色という。
   補色を考える時は、正反対の位置の色だけでなくその両隣も含める。
    
 これらの補色関係を考慮して色相の輪をつくったのが、12色相環である。    
 一般には、マンセルという人が作った「色のものさし」(記色法)の10色相環がよく知
られているが、カラ−ハ−モニ−やフィルタ−ワ−クをふくめた写真における色の問題を考
える場合は、12色相環のほうが便利である。対角線にある補色関係がよくわかるだろう。
     
 「色」ほど複雑なものはない。色は匂いや味や音や触感とともに、五感のひとつだから、
物理や化学の知識だけでは割り切れない。
    
 しかし、この12色相環だけは、プリント・アウトして自分のデスク近くに貼って置くと
よい。この位置関係はそれくらい大切だ。五感だけに頼らず、多少の理屈が分かり、この関
係がすっと頭に映像として浮かぶくらいでないとカラ−・コントロ−ルを敏速・正確に、あ
るいは大胆、積極的な試みを行うことはできない。これが分っていて、それに明度、彩度の
変化、グラデ−ションを併せた微妙な構成がカラ−写真の醍醐味になる。  
     
 最初は12色を記憶するだけで大変だと思うかも知れないが、色盲でないかぎり少し努力
を重ねる内に、やがて大体のことは本能のように身につくものだ。
    
   

色には3つの属性がある

      
 だいたい、われわれは、どのくらいの色数を見分けられるかというと、実に数千万に上る
といわれている。
 しかし、赤、橙、黄、緑、青、紫といった色相だけの区別は、せいぜい百七十見当という
ことになっている。それに明度の差、彩度の差を入れるとなると、そこに無数の差がうまれ
るので、数千万になるわけだ。
     
      
     色 相  色あい(hue ヒュ−)
    
            他の色と区別して特長づける
            おおむね波長で示される
     
     明 度  明るさ(value バリュ−)
     
           (白、グレ−、黒)の無彩色は明度の違いがはっきりする
            有彩色にも明度はある(淡い赤〜黒に近い赤も)
     
     彩 度  鮮やかさ(chroma クロマ−)
     
            鮮やかさの度合い
            (冴えた黄色もあれば、灰色がかったにぶい黄色もある)   

    
              

色が感情を刺激する

     ◎ここに、「色の性格と感情」という一覧表があるので、一応の参考として掲載する。         色の性格と感情

  

     
 色を見たとき、われわれは暖かいとか冷たいとか感じる時があるが、これは主として色相
に関係するといわれる。暖かく感じるのは、RやYを中心とする一帯であり、これらの色を
暖色と呼ぶ。事実暖色の代表である赤の波長は、赤外線(熱線)にもっとも近い。
     
 この暖色は膨張色、進出色、興奮色ともよばれる。つまり、人目を強く引きつけ、感情を
刺激する色であり、陽気で派手で、賑やかな熱気を感じさせる色だといわれる。
 一方、冷たいと感じるのはCやBの一帯だ。これらの色は寒色とよばれている。この寒色
は収縮色、後退、鎮静色といわれ、人間のエネルギ−代謝を抑制し、興奮を抑える作用を持
っている。
     
 ぼくは、昔、カラ−映画のウエストサイド物語のスタ−トの字幕を見た時、スクリ−ンの
画面全面が暖色、冷色に変化するにつれて、ぼくの体も熱くなったり寒くなつたりするよう
な気分を体験した。この字幕を作った人は、今はおぼろげだが当時世界的に有名なソ−ル・
バスというグラフィック・デザイナ−であったように思う。

    
                  

色で感じる重さと軽さ

      
      
 シ−ソ−の上に乗った黒い玉と黄色い玉は、黒い玉の方が重く、黄色い方が軽く感じる。
この重さの判断にもっとも影響をあたえている色の属性が明度なのだ。つまり、明度の高い
色は軽快感を、低い色は重圧感を与える。
    
 この重さ軽さのほかに色彩による大きさの判断にも、明度は大きな影響を与えている。
小型の軽自動車には白をはじめとした明るい色が多く、黒が用いられることがほとんどない
のは、こうした色彩効果を考えてのことだろう。