玉井瑞夫<写真繧絃彩色>塾 < 捕足説明 2001.7.14>        当塾の運営について        
 このところ、退塾、休会等の申し出があったので、当塾の特色、運営、また
これらへの対応について述べておきたい。
    
 僕は長い写真生活での弟子や学生との関係を振り返ってみて、教えるという
ことも、学ぶということも、大変むつかしいものだと痛感してきた。そして最
終的には、「双方が確かな人間関係を尊重しながら、それぞれが相手を見守り
ながら、自分で学ぶということに尽きる」と思うようになった。      
      
 僕の古くからの友人にハ−バ−ト大学で教鞭をとっている片山利弘君という
グラフィック・デザイナ−がいるが、彼が受け持つ学生は毎年4〜5名でこれ
でも多い方だといい、完全なタッチ・トレ−ニングである。        
 日本の大学生は大学に入るとたるんでしまう者が多いが、アメリカでは大学
に入つてからの方がよく勉強する。世界各地から選ばれてハ−バ−トに入って
くる学生は知識欲旺盛で実行力があり、教授である彼も絶えざる研究、勉学を
怠ると教えて行けないほどの真剣な討論があるという。
       
(この大学は、世界から英才といわれる先生を多数集めて、少数精鋭でのマン
 ツ−マン教育のため、授業料も非常に高額な私学である。特に政治学では世
 界のトップを行く)
     
 僕は毎夏ボストンから休暇で帰ってくる片山君から、ハ−バ−トでの教育の
実際と成果を聞く度に、ますますタッチ・トレ−ニングの重要性を痛感し、僕
の後半生はそれに徹底するようになった。
     
 偏差値だけの重視で入れる日本の大学や写真専門学校でのあいまいでル−ズ
な教育の多くは、トコロテンのように押し出されて卒業するに近い実態で、こ
んなことで写真の醍醐味の片鱗さえも体得できないだろうと呆れることが多か
った。その原因は教師と学生の双方に自覚がなく、非常な怠慢がある。
     
 ぼくの提案は、ルネッサンス時代のように自らの素質を石は珠玉に、ダイヤ
はダイヤに磨く努力と、自分のなかにある未知数を発見する楽しさやア−トへ
の理解の深まりからの人間としての生き甲斐を感じる多様性の充実である。
     
   
特技といえる余技に
 前にもふれたが、人生は仕事ばかりではない例として、竹村健一、ソニ−の
盛田さんなどのグル−プのことにを話したが、手前味噌ながら僕自身にもそれ
らしきことがあつた。                         
 僕はふとしたきっかけで40才からゴルフをはじめることになったが、職業
柄からの特権のようなことから、プロの青木功氏に教えを受け、彼の指導の凄
さから1年半でオフィシャルのシングルになった。            
 また、50才から始めた40級エンジン付きのラジコン模型飛行機では、日
本チャンピオン松井勲氏にスタント(曲技飛行)の手ほどきを受け、1年後に
は競技会に出られるようになった。尤も70名ほどの選手は高校生から30才
台の若者ばかりで、50台はぼく1人。意外なことに入賞は逃したが4位とな
り、気の毒がった主催者が敬老賞を出そうといわれたが、これは断った。
     
 いづれにしても凝り性の僕は、一流、本物といえる師につけたことから熱中
した。しかし、技術の自慢話をするわけではない。つまり、僕は一番ゴルフを
やったり、飛行機を飛ばしたりしたころが一番仕事も良くやったということ。
つまり、僕は、この時期の多様性のある生活と行動が、僕の経済的基盤である
広告写真家として最もよく働き、多くの賞を受けたり、内外共に充実していた
ことである。
     
 優柔不断では、同じ一日24時間を有効には使えない。必要な時間は作るも
のである。僕はこの頃からできるかぎり活発な前向きの姿勢をとり、物事を単
純化し簡明に割り切ろうと努めた。余技としての趣味、スポ−ツなどの時間も
僕の肉体的、精神的に必須の「特技タイム」と称して日時を決めてキッチリ取
った。こうした余技も中途半端では何の向上もなく意味がない。特技といえる
ある域に達するまでの集中力、努力が必要である。            
 その特技に集中することから得られるある種の醍醐味がストレスを解放し、
精神的な余裕を生み、よりスケ−ルの大きい生き生きとした仕事につながった
と僕は思っている。
      
 人生を大局的な見地から眺め、萎縮しなければ、特技(余技)と仕事の両立
はやればできるものである。僕はいわゆる会社人間とか、余裕のない仕事の虫
といわれるそんな味気のない人の生きざまはどうにもわからない。
 塾生諸君にも写真が本業にもいい影響をもたらし、多様性のある人生を築く
特技として両立させてもらいたいと願う。
 僕は、写真家としてすくなくともニセモノではなく本物と思っている。諸君
の一助になれば幸いである。
    
あらためて、当塾の運営について
        
 話が大分ズレてしまったが本論に戻る。
 すでに6月の月例講評の後半に書いた部分を再読し、ル−ルの1.2.をよ
 く理解してもらえば、結論はわかるはずである。
     
1。僕の講座は、毎回書き下ろしている。塾生に対しては僕なりの長い写真体
  験のエッセンスと今日現在の考えをまとめた「授業」と思い、真剣に書い
  ている。(理解度によっては、多少内容を変更することもある)
     
2。塾生はなるべく早急にこれを読み、ゲストブックに講座の評論、感想等を
  述べるのは、授業への出席を意味する。応答なしは、無断欠席に相当する。
  (無断欠席は、塾長・管理人は、当人は口もきけぬ重病かと心配し、ある
   いは連絡も取れない海外出張先かなどと考える)
    
3。月例への作品提出は義務づけていないが、せっかくのディスカッションの
  場である。新作・旧作を問わずできるだけ提出が望ましい。      
  作品提出が、諸般の事情から不可能とおもわれる時は、なるべく早急にそ
  の理由と作品不提出が当月のみか、あるいはその期間などを、必ず管理人
  に申し出ること。                      
      
4。上記の 2。3。の対応、実行は、当塾では唯一のコミュニケ−ションと
  技術の伝達手段の場で、これをおろそかにしては成立しない。
  これは、入塾条件の1、2番に書いたやる気と信頼関係の常識であり、当
  塾の哲学である。殊にけじめは大切である。
       
5。月例に対する「先生講評」への感想、質問等ももう少し活発な発言があれ
  ば、僕としては参考資料になる。個々に対面しての授業でないので、時に
  のれんに腕押しの感あり、戸惑うこともある。
     
6。当塾には、休会の規定は原則としてない。
  しかし、塾生としての義務を順守してきた者で、諸般の事情からやむなく
  ある期間、塾生としての義務が果たせない理由から一時的な休会希望の申
  し出がある場合、塾長がその内容を検討し、時に認める場合もある。 
     
7。当塾では、2。の無断出席に該当する場合、3。の月例作品不提出の申し
  出なく不提出の場合等の塾生としての義務不履行は、当人への注意勧告を
  行い、再度の不履行があった場合は、自動的に除名とする。
     
  優柔不断な分子は、やる気のある塾生にとっては、真摯に創る者だけが味
  わえる快い緊張感を損なう。これらは不協和音、邪魔な存在として排除せ
  ざるを得ない。
     
(註)
      
  当塾は、僕の弟子や友人達から、かなり不思議な写真教室のように見られ
  ている。つまり、ぼくのようなプロ写真家が無料で講座を開き、指導をし
  ている例が全くないからである。                  
  最近は僕がゼミで教えた一番若い卒業生で、プロ写真団体にやっと入会を
  許された者までが、アマチュア向きの有料の教室を開き、撮影会指導、添
  削などを始める始末である。
      
  僕は新聞社が開設している写真教室やアマチュアを集めた写真の会のあい
  まい模糊とした姿勢や客集めのための過剰なサ−ビスがかえって個性を失
  わせる実態を知りすぎた。                     
  そんなことから、僕はインタ−ネット上での本当のことしか言わない本物
  のタッチ・トレイニングの実験をやろうとしたのがこの塾である。
      
  塾生諸君には、稀有な存在といわれるこの塾には、心してつき合ってもら
  いたい。                             
  僕自身としては諸君への対応がおっくうに感じたり、面倒などと感じはじ
  めたら、師匠としての資格がないものと思い、即座に塾を閉じるつもりで
  いる。
  僕は、塾生諸君の熱意が感ぜられる限り、当塾は存続すると思っている。
      
(備考) 以下、参考まで。
     
  わが国の著名なプロ写真団体、権威あるアマチュア写真団体では、休会の
  規定は次の場合に限られている。                  
     
  それは長期療養、長期海外出張等で会員としての義務が果たせない場合で
  これまで会員としての義務の履行[会費が完納されており、総会・行事へ
  の出席(未届け欠席のないこと)]を確認して、休会届けが受理される。
  この条件に満たない者は、退会扱いになる。
        
  退会については、会費を完納し、退会届けを提出した場合は、理事会で承
  認し、受理される。                        
  会費未納のまま、退会する場合は、保証人への通知の上、除名を機関紙に
  公示される。                           
  (機関紙は、写真業界その他関係業界に送付されているので、写真家とし
   ての立場は失われ、他の写真団体への入会希望も受け入れられない)

            
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