聖クルアーンの注釈について
 一イスラームは、時空を超越した真理、創造の主、偉力の方・自存永生の方・仁慈な方・全知全能の唯一の神を、アッラーと呼んで崇拝する。人間は、かれに感謝して仕え、直き道の上に四六時中かれと一緒に暮らし、よろずの事をかれによって言いかれによって行い、その守護のもとにあって導きのまにまに、あやまちや罪を犯すことなく、恐れも憂いもなく、各自の大切な人生を最も有効営み、至上の幸福を成就するのである。およそイスラームでは、王侯も庶民も労資も貧富も男も女も、神のみ前においては何の差別もなく、成道した先達も入教したばかりの真の信者も同列で、みんなが和尚おしょうであると同時に小僧である。各人は人間の尊厳を自覚し、物質面神面来世や現世その他何事にも偏することなく、修道のための特別の苦業もなく、中正の道をたどり、それぞれの分野においてアッラーの道のため己れの業のために、刻々を真剣に積極的に営むのである。ムハンマドかれの上に平安あれは、わずか二十三年間のイスラームの布教により、全く文盲で未開な欠陥に満ちた砂漠の民を教化した。それでかれらは世界のどこに行っても、立派な人物として、また平安な道への教導者として敬慕された。かれらはイスラームを宣揚し、やがて輝かしいサラセン文化をうち建て、現代科学技術発展の基礎を築くに至った。これらは、史上の例のない奇跡ともいうべきである。実にイスラームは、この語が意味するように、平和な教え、神の意志に服従帰依きえし、己れ自身を完全に発揚するよう導く、自然な教えである。


 二、クルアーンは、聖予言者ムハンマドが四十才のとき、メッカ郊外の光明山頂の洞窟で、天使ガブリエルを通じて初めて神の啓示を受け、これから逝去の年までの間(609-632 AD)に啓示された、アッラーのことばの全部を編集したものである。新・旧約聖書その他の諸経典は、使者自身の語の記録であり、しかもその当時の用語は早くすでに失われ、その内容も永年にわたり加除改変が繰り返されているに比し、クルアーンの場合その用語のアラビア語は、その後、中東や北部アフリカ諸国の国語となって広く普及しており、またアッラーのことばの一字一句が、原形のまま千四百年後の今日まで、クルアーンの中に慎重に守護して継承されている。
訳者 三田了一


「日亜対訳・注解 聖クルアーン」
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