Party Crusher 2001.05.14 光流
「ねえねえ、今日はゼフェルの誕生日なんだって」
「そうなのか?へぇ、よく知ってるな、マルセル」
朝早くからランディの執務室に訪れたマルセルは自慢げに胸を逸らした。
「勿論、ランディの誕生日だって知ってるよ。
ランディだけじゃなくて、守護聖みんなの誕生日と血液型と、身長・体重、スリーサイズ、
食べ物の好みだってチェックしてるんだから」
(そんな事を把握していて、いったいマルセルはどうするんだろう・・・)
ランディはそう考えたものの、返ってくる答えが想像できなくて怖いので話題を変えた。
「え・・・と。だって、ほら、オレ達は普通とは違う時間軸にいるだろ?
だから、誕生日って、あまり意味が無いんじゃないかと思ってさ。
その通りに年を取れるわけでもないし」
「ダメだよ、ランディ。誰かのお誕生日なんて、それを口実に騒ぐ為のものなんだから、時間軸がどうの、
年を取らないからどうのなんて言ってちゃ」(そ・・・そういうものだったかな、誕生日って・・・)
マルセルの意気込みに押されて、反論を口に出せないまま黙っているランディに、なおもマルセルは言い募る。
「だからね。今日は、陛下とロザリアも呼んで、みんなでパーティしようよ。いいでしょう?」
「オレは別にかまわないけど・・・」
(ジュリアス様は何て言うだろう・・・でも陛下は喜びそうだよな、こういうの)
「じゃ、ランディも賛成だね。みんなに知らせてこなくっちゃ」
(いや、積極的に賛成したと言う訳じゃなくて――)
そう言い返す前に、マルセルの姿はもうドアの外に消えていた。
「まあ・・・いいか」
本当にいいのか!?
案の定ジュリアスは文句を言ったものの、女王陛下の鶴の一声でゼフェルの誕生日パーティは実施された。
残念ながらロザリアは欠席だったが、この後の惨状を考えると幸運だったというべきだろう。
開始後1時間もしないうちにゼフェルと女王陛下の姿が見えなくなった。
「ゼフェルはどうしたのだ!!誰の為の会だと思っている!」
勧め上手のマルセルにしこたま飲まされたジュリアスは、室内の花瓶に向かって説教を始めている。
「大体そなたは、普段から守護聖としての自覚がないのだ。そもそも守護聖とは・・・ううっ。
わたしだって、なにもこのように四六時中怒ってばかりはいたくないのに・・・。
ひっく。気侭に聖地を抜け出したり、オスカーのように女性をはべらせたり、
クラヴィスのように昼寝したりしたいよぅ・・・」
――どうやら泣き上戸のようである。
「まあ、クラヴィスさま、このようなところでお休みになってはお体に障りますよ。仕方がありませんね。
わたしの屋敷の方が近いですから、今夜はお泊りになってくださいませ。
いえ、構わないのです。わたしのベッドは広いですから、クラヴィスさまと一緒に・・・」
かなりの量を飲んだものの、けろっとしているリュミエールは、クラヴィスの身体を軽々と抱き上げて会場を出て行った。
この後、いったいどうなるのかは考えたくないところだ。
「そんな瞳で見つめるもんじゃない。周りが見えなくなって、君だけを抱きしめ、その唇に触れたくなるだろう・・・」
オスカーは、誰かをバルコニーに誘い出しているようである。
酔っていても素面でも、する事に変わりは無い。
だが、相手がオリヴィエだということには気が付いていないらしい。
「ルヴァさま!暴れないで下さいってば!!ルヴァさま〜〜っ」
普段、よほど鬱屈した物があるのだろう。
ルヴァは、ランディの制止など聞かずに、テーブルの上の皿をなぎ倒したり、
グラスを壁に向かって投げつけたりと大暴れである。
それを止めようとしているランディを足蹴にしてルヴァは勝ち誇ったように高笑いをあげる。
「はーっはっはっはっ。わたしだって、やるときはやるんですよ〜。
見ていますか、聞いていますか。ランディ、返事をしなさい!」
それは無理である。
蹴り倒されたランディは、テーブルの足に頭をぶつけて昏倒しているのだから。
「はー、こんなの付き合ってらんねえよ。」
聖殿の庭で女王陛下を相手に、ゼフェルがぼやいていた。
「でも、いいんですか?ゼフェル様のお祝いなのに」
二人きりのときは、相変わらず「様」付けを止められないアンジェリークの肩を抱いてゼフェルは呟く。
「別に、いいんだよ。あいつらは騒ぐネタさえあれば、オレがどこにいようと関係ねえって。
大体、祝ってくれる気があるのかどうかも怪しいぜ」
「そんな事無いですよ。だってゼフェル様の生まれた日ですもん。すっごくすっごく大事な日です」
「オレは・・・おまえがそう言ってくれるだけでいいんだよ。他の奴なんかどうでもいいんだ――アンジェリーク・・・」
「ふふふっ。お誕生日おめでとう、ゼフェル様。これからもずっと、ゼフェル様のお祝いを一緒にさせてくださいね」
「じゃ、お前の誕生日はオレが祝ってやる」
「ずっとですよね、ゼフェル様」
「ああ、ずっとな、アンジェ・・・」
糸のように細く欠けた月明かりの中、ゼフェルがアンジェリークにそっと顔を近付けていく。
「好きだぜ・・・」
二人の唇が重なろうとした瞬間、マルセルが静寂を破った。
「あー、こんな所にいるぅ。ゼ・フェ・ル、ダメだよー。ゼフェルは今日の主役なんだから」
(・・・ったく、何で、こんなタイミングで!!滅多に二人でいられる時間なんてねえのに!)
「もう、みんな潰れちゃってるんですよ、陛下。陛下とゼフェルは、まだ殆ど飲んでないでしょう?
さ、会場に戻って飲みましょう」
「みんな潰れちまってるなら、もう、お開きだろ」
憮然とした表情のゼフェルに構わず、マルセルは二人の手を引いていく。
「いいじゃない。二人はお互いの誕生日をこれからずっといっしょに祝うんでしょ?
だったら、そのうちの一回くらいぼくに付き合ってくれても」
「そりゃ、付き合えって言うなら・・・え?おいっマルセル!」
「あー、いっけなーい」
「おいっ!お前、もしかしてずっと覗いてて、一番いいところで・・・」
二人の手を離して走り出したマルセルは、振り返って赤い舌を出して笑う。
「ごめんねー。多分、もう邪魔しないから、続きしていいよ、ゼフェル」
(・・・出来るかっ、こんな状態で!)
文句を言おうにも、逃げ足の速いマルセルは遥か彼方である。
「なんて誕生日だ・・・」
数日後、裏で流された聖地新聞には、花瓶をかきいだいて涙を流すジュリアス
舐めまわすように、抱いたクラヴィスを見ながら自分の屋敷に戻るリュミエール
オリヴィエの頤に人差し指をかけながら化粧をされているオスカー
気絶しているランディに馬乗りになってグラスを傾けている、目の吊り上ったルヴァ
目を瞑った女王陛下に覆い被さるようにしているゼフェルの写真が載っていた。
どれも目の部分には黒いラインが引かれていたが、聖地中で彼らの正体に気付かぬ者はいなかったという・・・。
Fin

| 光流、BD企画の小説ありがとうございます〜♪お疲れ様でした〜♪ この手のコメディー小説大好きですっ私(*^o^*) ラストは、大笑い(>_<) それぞれのキャラが活きていて、お話しが目に浮かぶほど楽しい★ ゼフェルには、やっぱりカッコイイBDより、こんな風にちょっと間抜けな シチュエーションがお似合いですね!! ゼフェル特有の「照れ」と「怒り」具合が最高でした♪ 素敵な小説ありがとうvv 嬉しいよぉぉーーーvv イラストも素敵です〜(*^-^*)お幸せにーー★ |