『イラク戦争 千葉の声』

平和祈るばかり 市川のモスクで金曜礼拝

朝日新聞千葉版 平成15年3月22日付
 コーランが流れる中、約60人のイスラム教徒たちがメッカの方向に平和の祈りをささげた。市川市行徳駅前3丁目にあるイスラム教の「ヒラーモスク」では21日正午、開戦後初めての金曜礼拝があった。
 
 ヒラーモスクには県内のほか、都内や神奈川県から信者が集まる。イラク人はいないが、パキスタンやマレーシア、バングラデシュ、アフリカのガーナなど様々な国の人たちが、イスラム教の休日にあたる金曜日に祈りをささげるためにやってくる。

 モスクを管理し、毎日5回の祈りを欠かさないパキスタン出身のアマナット・アリさん(29)は「イスラムとは平和という意味です。私たちは平和を祈っています」と話す。

 礼拝に訪れたパキスタン人のユーサフ・シャバズさん(29)は「私の国は中立の立場をとっている。アジアで金と力があり、第2次世界大戦で原爆を落とされた日本こそ、イラク戦争では中立の立場で平和を訴えてほしかった」と日本の対応を批判した。

 またガーナ人の会社員男性(35)は「小泉純一郎首相はなぜアメリカを支持するのか。理由をはっきりと教えてほしい。私たちの税金を戦争に使って欲しくない」と訴えた。


メッカの方向に祈りをささげる人々(市川市のヒラーモスクで)

イラク攻撃開始 イスラム教徒も非難

朝日新聞千葉版 平成15年3月21日
最後通告の期限が切れ、なすすべもなく戦争は始まった。戦火に近い中東から県内に来ているイスラム教徒たちは、米国の空爆を非難し、イラク市民の安否を気遣っている。

 千葉市中央区椿森1丁目でペルシャ料理店を経営しているイラン人アリ・アマニさん(37)は、開店準備に追われながらも空爆が気になる様子。度々、店内のテレビに見入った。イラン・イラク戦争に出兵経験がある。

 「あの戦争もひどかったけど、イラク人に対する敵意はなかった。だれも好きじゃない戦争でどんどん人が死に、馬鹿馬鹿しかっただけだよ」

 批判は為政者に向かう。

 「悪いのは政府でしょ。テロも正しくないけど、特に理由もなく攻撃を始めた米国も正しくない。犠牲になる人たちのことをよく考えるべきだ。イラク国境近くに住む親類も遠くへ避難しているらしい。みんな迷惑しているよ」

 「イスラム教徒であれば、たとえ友人でなくても心では兄弟だ」。
エジプト国籍で、千葉大学医学部の博士課程で寄生虫について研究中のウサマ・サラ・ベレルさん(38)とラビ・モハンマドさん(34)は、口をそろえた。

 「米国は軍事力は強いが、自己中心的で政治的能力はゼロだ。湾岸戦争の時はイラクを攻撃しなければいけない理由はあったし、自分も納得していた。でも、フセイン大統領を追い出そうという今度のケースは違う」とベレルさんは憤る。

 さらに続けた。「彼を辞めさせるのは他の国であってはならない。イラク国民が自分たちで変えるべきだ。こんな戦争に賛成している人はほとんどいない」

 つい最近、戦火に見舞われたアフガニスタンから来た男性は現在、四街道市内の自動車解体会社で働いている。

 「イラクのことは自分には関係ないけど、おれの国もいろんなやつらに荒らされ、散々な目に遭ってきた。故郷に残っている家族や知り合いの生活を見てほしいよ。戦争が正しいことだなんて、絶対に思わないはずだから」と嘆いた。