Jazz Town Journal 0508

第七回今治ジャズタウン講評
第七回今治ジャズタウンは8月28日に成功裏に閉幕しました。第一回から全ての大会を取材して来られた、元スウィングジャーナル編集長の岩浪洋三先生にこれまでの経緯を含めて今回のジャズタウンの印象について伺いました。8月28日のメインステージが終わった直後の興奮まだ醒めやらない午後10時に、神戸洋酒クラブでお聞きしました。

 岩浪洋三先生  2005年8月28日 午後5時 今治市公会堂前にて

記者: 先生、今晩は!毎回、ジャズタウンの為にご尽力頂き誠に有難うございます。どうか宜しくお願い致します。 
岩浪: 今晩は!毎回楽しませて貰っています。
記者: 今日はエンディングが良かったですね。
岩浪: 演出も最高で、なかなか、余所のフェスティバルでもない素晴らしいアイディアで良かったですよ。
記者: 今年はスウィングガールズとかゴスペラーズとか、新しい企画で若い世代の方が大挙して参加して下さったのが印象的ですよね。
岩浪: そうですね。やはり地元の方の参加が得られたというのは大きいですね。スウィングガールズという のは、地元の高校生が中心ですか?
記者: 高校生の他に地元出身の短大生も含まれています。夏休みですから帰省しています。卒業しても地元に帰ってくる方も多いようですから、継続性もあります。
岩浪: なるほど!それで募集してね。
記者: はい、練習も僅かに一月だったんですけど、なかなか揃っていましたよね。
岩浪: でも、若い人は進歩速いしね。なかなか良いアイディアだと思います。
記者: ありがとうございます。今年は予算が減りましてね、それで危機感を持ちましてね。予算が減っても効果の上がる方法はないかなという、平尾委員長達の熟慮の上の決断でございました。
岩浪: 良かったじゃないですか。逆に、その危機感がマンネリ化を防いだと言えますね。
記者: 先生、今日は地方から発信するフェスティバルをどうしたら継続出来るかというノーハウについてもお教え頂きたいのですが。
岩浪: ええ。
記者: 毎年、先生は七回とも来て頂いて、ジャズタウンを見て頂いているわけですが、第一回は別格ですから今回は対象外として、一言で申して全国のフェスティバルを見回して、先生のご印象は如何でしょうか?
岩浪: ええ、何と言うか、本当のジャズというか、フォービートを中心としたね。今はフュージョンとかロックとかそういうものを加えているのが多いでしょ。言わばこれぞジャズというものを中心にして、すっきりしているし、聴きに来る人も安心して、今治ジャズタウンなら行けばいいというイメージが作られている。
記者: 東京からご覧になっても、ユニークな路線は行っていると!
岩浪: 一番いい形じゃないですか? アメリカでもニューヨークは別にして、カリフォルニアのモントレー・ジャズ祭などは地元との結び付きでやっている。地元のハイスクールバンドのコンクールとかね、優勝したバンドがオープニングに出るとか、そういう意味で地元と密着したやり方というのが一番長続きするし、地元の人々が応援したいという気分になるんじゃないですか?
記者: ありがとうございます。早速結論を頂いたようなんですけれども、ジャズタウンの二日間のイベントでは、一日目はタウンステージとして各地で同地多発ライブのような、言わばゲリラ戦的に展開して、二日目にはメインステージとして陣地戦のようにメイン会場に集まってというような企画で続けて来ましたが、このユニークな企画についてコメントを頂けるでしょうか?
岩浪: いいと思いますよ。例えば神戸のジャズストリートとか、横浜のジャズなんかも色んな場所でライブを重複してやっていますよ。地元の町の活性化というか、ジャズにあまり関心のない人達も何時も行きつけている店で一杯やりながら聴いてみようかなということになるしね。僕は良いと思いますよ。
記者: ありがとうございます。仙台の定禅寺などは大規模なようですが、あれは如何ですか?
岩浪: 以外に全国のお寺さんがジャズに最近興味を持っていて、奈良なんかでもお寺が積極的にジャズをやっていますね。猪俣さんも言っていたけど、お寺は大きな木で出来ていて返って音が良いんですよ。ウッドですからね!
記者: なるほど。
岩浪: また、お坊さんに結構ジャズ好きがいたりしてね。お寺のジャズというのが静かなブームになりつつありますね。
記者: では、こちらもそれを先取りしているとも言えますね。
岩浪: そうですね。
記者: 先生、スタンダードナンバーというか、古い方がお好きなナンバーを重視しているのですが、これも必要なことですよね。
岩浪: ええ、やっぱり僕なんかでも最初にジャズに興味持った時は、ハーレムノクターンとか、自分の知っているメロディーの凄い美しい曲を聴きだしたら、、それを演奏しているのがジャズの人で、それでジャズに入ったとかね。自分の好きな曲、今日も小林圭さんが、ホッタワンダフルワールド、誰でも知っているような歌を歌いましたよね。あの時がなんか一番拍手が多かったようですね。
記者: この間、秋吉敏子さんが帰って来られて、今治でも公演されたんですけれども、それが全て彼女のオリジナルナンバーであったということでね、スタンダードナンバーが無かったのでこの地方の人は物足りなかったと言っていました。
岩浪: その時は前以て、失礼ではなくて、スタンダードなナンバーを半分位入れて欲しいとか言っておけば良いんですよ。ビッグバンドの場合は、彼女はオリジナルしかやらないというのをポリシーにしていたけど、トリオとかソロでは東京でもリクエストに応じて何でもやっているんで、前以て申し込んでおけばいい。
記者: ああ、そうですか。地元の企画する人が配慮が足りなかったという訳ですね。先生、倶知安には行かれたことありますか?
岩浪: いや、倶知安には行ったことはないですね。
記者: 七年前にジャズタウンを始める時に、何のノーハウも知らなかったものですから、日本と世界の全てのジャズフェスティバルを調べた時に、倶知安ジャズフェスティバルというのを見つけたんです。そこが官民合同の実行委員会方式でやっていたんです。官がお金を出して民が運営するという今のやり方のモデルになりました。
岩浪: それはうまく行けば一番良いスタイルで、例えばスポンサーとか企業に頼っていると、不景気になると、富士山とか斑尾とかのように突然なくなるということになる。もう企業が手を引けばどうにもならなくなる。
記者: それでは、官民合同の実行委員会方式は長続きする一つの方法であるということですね。
岩浪: はい、そうですね。
記者: 先生は本当に長い間、全国のジャズシーンをご覧になって、スウィングジャーナル誌の初代の編集長であられるのですけれども、今治ジャズタウンの過去六回の出演者ですけれども、全国のトップレベルが集まっていると思いますが、どんなご感想をお持ちでしょうか?
岩浪: そうですね。米国というか外国からは呼んでいないけれども、猪俣さんのグループも毎年参加しているけれども、一度も同じメンバーでやったことがないという配慮が見られます。それにクリニックなども非常に良いことですね。クラシックでも、草津音楽祭なんていうのはクリニックがメインで、コンサートは僅か一時間位しかないというフェスティバルもあるぐらいですから。
記者: 先生は本当に長い間、全国のジャズを見て来られて、この地方発信のジャズフェスティバルというのは増えているのでしょうか、減っているのでしょうか?
岩浪: いえ、あの減ってもないし、わりと東北とか九州とか、特に東北や北海道は冬が長くて夏は短いので一番活動できる時期ですから、人が集まって何かしたいし、東京よりも地方の方がジャズを町の活性化と結びつけて、市自身が積極的に協力するという形が見られます。東北、北海道などとても盛んですよね。
記者: ジャズフェスティバルは地方から発信する方が返って条件も良いということですね?
岩浪: そうですね。そして行く行くは余裕が出来れば、今治ジャズフェスティバルで何かコンテストでも開いて、ピアノとかヴォーカルとかやれば良いですよ。そうすれば、四国だけでなく他の地域からも応募して来るかもしれませんね。
記者: そうですね。他府県からも大挙して来て頂きたいとPRはしているんですけれども、未だもうちょっとなんですが。先生、ありがとうございました。最後にジャズタウンの為に何かひとつ、ふたつアドバイスを頂けたら有難いのですが。
岩浪: あのう、今年はスウィングガールズなどの新しい企画もありましたが、この間矢野さおりが松山に来たようですけど、今治ジャズタウンから未来のスターを誕生させると、新人の間はギャラも安いですから、有名になっても、私は今治ジャズタウンでデビューしたんだから、今治だけはお金に関係なしに出ますとかね!毎年、今年の新人として猪俣さんも僕も紹介しますよ。今年は東大出の素晴らしいトランペットを紹介してくれましたね。地方のジャズフェスティバルからニュースターを育てて行きたいですね。
記者: そうですね。今治ジャズタウンから全国にそういう新人を全国に売り出して行けたら良いですね!先生、今日は本当に有難うございました。これからもずっと続けたいと思いますので、また毎年コメントを舞台の上から宜しくお願い致します。ありがとうございました。
岩浪: ありがとうございました。失礼します。(完)

 平成17年8月28日 ジャズタウン・ジャーナル編集部