しばらくかなり堅苦しい話が続いたので、この辺で一回、リラックスできる話題を
提供することにした。話は海外ロケ、取材につながる肩の凝らない四方山話である。
或る目的、テーマを持ってスポンサーつきの撮影に行き、帰ってくるとあれこれ知り合
いの雑誌社から「その他に何か変わったものを撮って来ませんでしたか」と電話がかかっ
てくるのが一般である。
ぼくはそれほど器用な方でないから、それ向きのサービス写真は撮らないが、何となく
自分好みの被写体に出会うとシャッターを切る。生来のアート好みがシャッターを切らせ
て、そんな海外写真の集積が3点のカレンダーになって受賞したり、月刊誌「美術手帳」
で3ヶ月24点連載のグラビア特集になったりしたこともあった。
言ってみれば、それは皆さんの海外旅行の記念写真と大して変わりはない。ただ、プロ
であるだけに、自分の好みには執念深く、「雑多な集積でも、それがひとつのまとまりが
つくような要領」を心得ているといったことはあるかもしれない。
その一番易しく、効果的な表現が連作である。
ぼくが「美術手帳」に掲載したものは、<かたちの風物詩> 「扉」「さまざまな意匠」
「窓」(1966年1〜3月)であった。実に平凡そのものといった題材の選択であるが
ぼくの几帳面というか、きっちりやらねば気が済まないといった気質がそのまま表れてい
るともいえる。
そんな気質と土木科出身ということもあってか、日頃なんでも水平、垂直な画面構成に
なって本人は閉口しているが、そんなところが、あの四角な窓と扉にぴったり合っただけ
のことであろう。自分の気質どうりの撮影だから、何の抵抗もなく撮影も素早く終わる。
皆さんも海外旅行で何かまとまった写真をと思われるとき、自分の気質を生かした題材
を選んでトライしてみてはとぼくはお勧めする。これなら時期を変え年月をおいても前後
のレベルを変えないで永続でき、かなりの集積ができるので、そこからの厳しい選択で一
冊の本も上梓できることになる。
今回ここに掲載する作品は、そんなシリーズ以外でフランクに撮ってあったものか
ら、なんとなく話題にできるお気に入りを選択し、気ままな放談をすることにした。
「船板の窓」と「扉」の2点をのぞき未発表作である。
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