(7)「ヨ−ロッパ風景・パリ」 1932
アンリ・カルチェ・ブレッソン
7の「ヨ−ロッパ風景・パリ」は、決定的瞬間という彼の写真集にある。
「決定的瞬間」というのは、カルチェ・ブレッソンが生み出した言葉である。
彼は視覚的要素と情緒的要素がひとつになり、その光景の意味をあらわした瞬間
に写真を撮る。それれはまた感動や生き方をあらわす一瞬である。彼は「常に、
時間とボクシングををした」といわれているが、「瞬間」は彼のボクシングの相
手であり、パ−トナ−である。こうした瞬間をとらえることができるようになっ
たのは、35ミリカメラができたお陰である。
(8)「女ぎらいの猿」 ハンゼル・ミ−ス
8の「女ぎらいの猿」は、LIFEに載っていたこの作品を発見した時、僕はな
んとも不思議な魅力を感じた。この猿はサル社会が嫌になり、フロリダ半島から
島づたいにここまで逃げてきたバチェラ−(独身者)らしい。
LIFEの解説は実にシャレたもので、「サルでもアカゲザルともなるとトラク
タ−を運転するものもいる。メスを避けて孤独を楽しむものがいるのも道理だ」
とあった。
早速瑛九に見せると、写真にはユ−モアのある作品が非常に少ないが、これはま
れにみる本物のユ−モアだといい、つまらぬ駄洒落を極端に嫌う瑛九は、これを
例として「写真におけるユ−モア」と題する評論を写真誌に書いた。
(9) 「ノルウェ−のフィヨルド」 1959 エルンスト・ハ−ス
9の「ノルウェ−のフィヨルド」の作者、エルンスト・ハ−スは、報道写真家で
ありながら、写真とア−トのかけ橋になりたいといい、風景や花のすぐれた作品
も残した。彼は非常に感度の低いカラ−フィルムが発売された当時から、これを
積極的に使うための特殊技法の研究にも熱心で、そのユニ−クな実験作品とその
感性からカラ−の魔術師と言われた。そんな開拓者として紹介した。この作品に
ついては、説明の必要はないであろう。
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